BLOOD 本編 第1章
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 華やかな道を二人が歩く
 国全体が祝福の中にある
 中心人物は二人の男女
 男性の方は長髪に銀髪で中性的な顔立ちで美形な少年だ
 もう一人の女性は少年より長く美しくなびく赤い髪
 顔立ちは非常に整った綺麗な顔立ちだ
 誰かが言う『彼女は世界一の美人』と・・・・・
 その言葉が似合う女性は他にいないだろう
 いや・・・・もう一人・・・・彼女に唯一対立できる女性がいる
 彼女が闇の中の光なら・・・・その対をなす彼女は光の中の闇

 華やかな結婚式で盛り上がる国の隣国・・・・
「ゼートラルの兵は皆殺しだ!」
 青い髪が舞った
 炎に浮かぶその青はまるでゼートラルで今結婚式を挙げている姫君
 メシア・シャムシエルの赤い髪の対象
 その瞳に宿るのは氷のような深い闇
「なんとしても・・・・結婚式をぶっ壊す・・・・あの人のために」
 美しいその顔を血に染めて少女は己の心を埋め尽くすメシアへの憎悪と一人の男への愛に
 その身を焦がしていた

 あなたの為なら私は修羅になる
 私は心にそう誓った
 私には恋人がいる・・・・名はゼル・・・・フルネームはゼルエル
 王族の血筋のかれはスラム街の最果てで出逢った
 物心付いた頃から私の道にあったのは死体と血のみ
 悲しいや辛い・・・・寂しい・・・・ましてや楽しいなんて知らなかった
 その血の雨の中で彼は私を救い出してくれた
 すさまじいまでの剣さばきに私はこの世のすべてを見た
「おいおい・・・・こんな場所にキミのような美少女がいるなんてな」
 このとき彼は私に世界をくれた

「ほれ、にっこり笑ってみ?」
「・・・・・・・」
 出逢ってすぐにゼルは私を自分の屋敷に置いてくれた
 けど・・・・いま思うとすっごく失礼だったと思う
 無言の私をゼルは笑ってみせてくれた
「こうだ!こう・・・・わかるかな?」
 よく見捨てなかったと思う
 私がゼルなら・・・・見捨てていた
「私・・・・わからない」
 これがはじめてゼルに私は掛けた言葉だった
「・・・・・・」
「なにか?」
「喋れるんだな・・・・キミ」
 ゴン・・・・!なぜか私は彼の頭を叩いていた
「よし、いいツッコミだ・・・・これでこそわが弟子じゃ・・・・大きくなったの」
 およよ・・・・口元に右手を当ててゼルは後ろに引いた
「お父さんはうれしいぞ・・・・・」
「あなたに産んでもらった記憶はないです」
「あれ?俺って・・・・カタツムリ?」
 よく意味がわからなかった
「んで、名前は?」
「名前なんてありません・・・・」
 私に名前なんてない・・・・親もいない・・・・友達も・・・・
 そんな私になんで名前なんて・・・・
「そうだな・・・・じゃあ、お父さん・・・・考えちゃうぞ」
 だからあなたは私と歳・・・・一緒でしょ
「そうだな・・・・プレシア・サキエル・・・・なんてどうかな?」
 この日からプレシア・・・・それが私に名前になった

「ほへ?・・・・あんた誰?」
 失敬ですね・・・・わからないんですか?
「プレシアです・・・・自分で付けた名前をもうお忘れですか?」
「・・・・・貴殿はどこかの姫君か?」
 なにを言っているのですか?
 あなたから言われたままに私はドレスなるものを着ただけです
「ベッピンさんになって・・・お父さんは嬉しいぞ、綺麗だぞ・・・・・プレシア」
 ・・・・綺麗?
「キレイ・・・・ってなんですか?」
「ごて・・・・一からかよ・・・・これはほんとにキミのお父さんになっちゃうかも」
 なんででしょうか?
 すごく暖かいです・・・・

 ・・・・なんだろう・・・・この気持ち・・・・
「へ〜キミ可愛いね〜・・・・・今夜どう?」
「お友達の勧誘なら間に合ってます・・・・・」
 男女が逆だと思いますよ・・・・それ
「ゼル・・・・そろそろ行きましょう」
 正体のわからないものが怖い・・・・私は自分が怖い
 だから・・・・早くこの場を
「お、デカパイ・・・・・・」
 な・・・・・・・ゼルの額を思い切り叩く
「げふ!」
 私の胸をなんで掴むんですか・・・・誰にも触らせたことなかったのに
「私もデカパイよ〜」
 さっきまでゼルに声を掛けていた人がゼルの手を掴む
「おお、デカパイ・・・・美味しそう・・・・」
「い、行きますよ・・・早く!」
「痛でで・・・・・初めてなんだから優しくしてよ・・・・♪」
 なにを言っているんですか・・・・バカ・・・・・

 ・・・・なんだろう・・・・この気持ち・・・・
「へ〜キミ可愛いね〜・・・・・今夜どう?」
「お友達の勧誘なら間に合ってます・・・・・」
 男女が逆だと思いますよ・・・・それ
「ゼル・・・・そろそろ行きましょう」
 正体のわからないものが怖い・・・・私は自分が怖い
 だから・・・・早くこの場を
「お、デカパイ・・・・・・」
 な・・・・・・・ゼルの額を思い切り叩く
「げふ!」
 私の胸をなんで掴むんですか・・・・誰にも触らせたことなかったのに
「私もデカパイよ〜」
 さっきまでゼルに声を掛けていた人がゼルの手を掴む
「おお、デカパイ・・・・美味しそう・・・・」
「い、行きますよ・・・早く!」
「痛でで・・・・・初めてなんだから優しくしてよ・・・・♪」
 なにを言っているんですか・・・・バカ・・・・・

 あれからの私なにかおかしい
 ゼルは私以外の女と一緒にいるだけで今まで感じたことない感情を覚えた
「シャン・・・・少し離れてあるかないか?」
 私の少し前でゼルが女と肩を寄り添って歩いている
「いいじゃない・・・・私たち恋人なんだし」
「違うから・・・・」
 すぐに否定したけど・・・・・なんだろう?
 この気持ち・・・・・
「もう、連れないな・・・・仕方ない、また今度だ・・・・待ってなさいよ」
 愛想笑いを浮かべて手を振ったあとゼルが私の顔色をうかがった
「・・・・・・お、鬼がいるよ?なに・・・・キミの後ろに鬼がいるよ?」
 びくびく・・・・膝を抱えてゼルがわざとらしく身体を震わせた
「もしかして・・・・嫉妬した?」
「そ、そんなんじゃありますん」
「どっちだよ!」
 わかりません・・・・
「嫉妬ってなんですか?」
「言葉もかよ・・・・まったく」
 その後ゼルはゆっくりと嫉妬の意味を教えてくれた
「違いますから・・・・地球がひっくり返っても違いますから!」
 言葉の意味を聞いて私は顔が赤くなるのを感じながら否定した
「全面否定ですか・・・・お父さんがっかり」
「・・・・私があなたのことが好きなんて絶対ありません」
 愛しています・・・・・
 誰よりもなによりも・・・・
 私を見てください
 私だけを見てください
 私に触れてください
 私だけに触れてください


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