煌く空、想いの果て 序章
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 何もする事がない放課後は本当に暇で、友達は部活や用事とかで掴まることはなく、
 ただ一人で退屈を持て余していた。だったら、学校で特に訪れることがない場所に趣き、
 くだらない時間を消化でもしようかと思った。

 図書室などといった、優等生しか利用しない施設に行き、
 豪快に居眠りをしていると司書の方に怒鳴られ、以後立入禁止というレッドカ−ドを喰らったり、
 放送室を無断に占拠して、カラオケ大会を始めたりすると間違えて校外のスピ−カにスイッチが入り、

 華麗な音楽が世間の皆様にご披露したりなど、
 平凡の日々を送っている俺には今の状況は少し刺激が足りないような気もする。
 が、学校中の先生たちから要チェックされているため、

 今はどの教室の鍵を借りようとしても、職員室に入るとすぐに
 パワフルな体育教師や生活指導の教師が駆け寄ってくる。
 そういうわけで、校内にいても、何もすることができないのであった。

 不名誉な事に不良のレッテルを張られている。
 俺は傷ついた心を癒すため風に当たろうと思い、屋上を目指していた。
 わざわざ、階段を登ってもアトラクションも何もなく周囲の景色を見渡せるだけの
 退屈な場所は本来なら学校を卒業するまで来ることはないだろう。 
 屋上に辿り着くと、なんと先客が二人いた。
 

 そのうちの一人は見知った、幼なじみの顔があった。
 しかも、この角度から見える限りではその、キ、キ、キスをしているように見える。

 幼なじみである、風椿梓(かぜつばき あずさ)

 長い黒色の髪を黄色のリボンで纏めて、この上なく整った顔立ち。
 麗しいつぼらな瞳は男の保護欲を注ぐ。性格は誰にも優しい穏やかな性格であり、

 この学校の多くの男子生徒が憧れて、告白する人間が絶えないという噂を聞く。
 しかも、その生徒たちは誰もが撃沈されている。

 そんな女の子と知り合いであり、幼なじみでもあるのは、
 単に家が近所同士であり、小学生の頃から一緒に遊んだりとケンカしたりなどと
 よくあるエロゲーの設定のような少年少女時代を過ごしてきた。
 
 今も仲良く登下校や遊びに行ったりする仲であった……。
 それはもう過去形になったと言うべきだろうか?
 梓は名前も知らない男子生徒とキスをしている。
 キスをしているってことは、あれが梓の好きな人。つまり、梓の彼氏ってことだ。

 今、ここで勇気を持って告白しよう。
 実は、俺こと水野翔太は梓の事が好きだ。

 幼なじみという身近な関係だからとかじゃなくて、純粋に梓に惚れていた。
 それは、一緒にいる時間も多かったせいもあるが、

 梓といると一緒にいると楽しかった。
 少なくても、孤独という時間を味わうことはなかったんだよ。
 寂しくもなかったし、一緒に笑い合えたり、俺が心を許せる唯一の人物だった。

 でも、今日で俺の恋は終わりは告げている。
 二人の姿をこれ以上見たくなかったので、

 さっさと後ろを振り向いて、慌てて登ってきた階段を同じように降りた。
 瞳から頬を伝って冷たい雫が流れていた。
 それは、俺の涙であった。そう、知らない間に泣いているのだ。
 本当に、失ってわかる大切な人に好きだと言えなかった俺が俺自身を責めていた。
 だが、もう遅い。

 大切な人は他の男に奪われてしまった。戻ってくることはない。

 だから……

 さよなら、梓。

 

 俺が大切な幼なじみと決別を決めた日。
 それが惨劇の序章になるとはこの時、まだ気付いていなかった


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