いつか見た夢 第3話
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 俺は目の前の光景に息を飲んだ
 なんだこれは・・・・・
 猫の鳴き声・・・・俺は鳴き声のほうへ向かうと
「菜穂!」
 抱きかかえて菜穂の息を確認する・・・・
 大丈夫だ・・・・気を失っているだけだと思う
 急いでケータイで警察と救急車を呼ぶ
「な・・・・・」
 なんだこれ・・・・人が・・・・死んでる?

「大丈夫かな?・・・・」
 心配げに菜穂を見つめているのは俺の双子の姉の綾だ
「大丈夫さ・・・・」
 そうでも思わないとやっていられない
「少し休んだら?」
 綾は不安げな顔で俺を見つめた
「そうするよ・・・・・」
 俺は空いている休憩室に腰を降ろして頭を抱えた
 どうしてこんなことに・・・・?
 違う・・・・悩んでる場合ではない
 今は菜穂を支えることだけを考えよう
「幸治・・・・くん?」
 光の中に人の影が出来た・・・・
 響子だ・・・・
「どうした?」
 響子はうつろな目でドアを閉じて鍵を閉めた
「なにを?」
 すぐに響子は服を脱ぎだした
「ま、待て!」
 俺が顔を背けるとすぐにその手を掴まれた
 縄が俺の手を縛っていく・・・・・
「響子!?」
 わけがわからずに俺がもがくと今度は脚を縛られてしまった
「・・・・・」
 響子は無言で俺の服を脱がした・・・・
 そしてなんの前戯もなしに・・・・・
「うく・・・・・」
 痛みの声と共に彼女の恥部から血が流れた
 それでも彼女は動きを止めない・・・・どうして?
 俺はわけがわからずに彼女の行為に必死に耐えた

 結局朝まで彼女の行為は止まらなかった
 今もそうだ・・・・・止まらない
 もう何度目かな?数えられない
 がちゃ・・・・ついにドアが開かれる
「な・・・・・・」
 ドアの向こうにはなぜか菜穂が立っていた
「幸治・・・・・さん?誰・・・・その女!」
 悲しげな瞳が俺に向けられる
「私は・・・・私は!」
 綺麗な顔立ちが今は嫉妬で歪んでいる
 ごめん・・・・俺はキミを裏切ってしまった
「・・・・・」
 響子は無言で立ち上がり服を着ると彼女を睨んだ
「許さない!」
 パチン!響子の頬を菜穂が叩く
「彼は私のものなの・・・・・」
 冷え切った声で菜穂はそう言った
「私には・・・・もう、彼しかいないの・・・・だから・・・・!」
 無気力な目を向ける響子・・・・響子なのか?
 彼女はそのままの表情で菜穂にナイフをむけた
「や、やめろ!」
 声は届かずに響子は菜穂をベットに押し倒して両手でナイフを上げてそのまま振り下ろした
 菜穂は間一髪でそれを回避すると近くにあった花瓶を持って響子を殴りつけた
「あ・・・が」
 小さく声を上げて響子がその場に倒れた・・・・・
「大丈夫ですか?」
 縄を解きながら菜穂が俺に服を着せてくれる
「は、はやく・・・・逃げよう」
 あのうつろな目・・・・もう彼女は壊れてしまっている
 俺は菜穂の手を引くと急いでその場を後にする

 いったん家まで戻ってきた・・・・準備を整えて俺は最後の財布を取って家を出る
「・・・・・っ!」
 扉の向こうにはおぼろげな瞳の響子が立っていた
 そして外で待たせていた菜穂も・・・・
 二人は崩れ落ちるかのように倒れ込んだ
「・・・・・・・」
 そして二人の間からおびただしい血が流れてくる
 見るとお互いの腹にナイフが刺さっていた
 どうなってるんだ?
 いつの間に菜穂は・・・・・?
 俺は・・・・・


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