とらとらシスター 第23回
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 最近毎日続けているお楽しみの時間、いつもは消極的な虎徹ちゃんだけれども今日は
 少し様子が違った。それも悪い意味ではなく、良い意味に。いつもの嫌々しながらも
 あたしの体を楽しんでいる虎徹ちゃんも悪くはないと思うけれど、やっぱり積極的に
 絡んでくる今の状態の方があたしは好きだ。
 何かあったのかな、なんて野暮なことは訊かない。だって理由は分かっているから。
 良心とモラルが壊れかけてきているのは簡単に想像出来る。いつかはそうなってくると
 思っていたし、そもそもそうなるように仕向けたのはあたし自身だから。
 もう少し先だと思っていたけれど、これは嬉しい誤算だった。夜を楽しむ時間は、
 長ければ長い程良いに決まっている。少しだけ不満なのは、サクラちゃんのせいで
 精液が薄くなっていること、それだけだ。虎徹ちゃんはあたしが毎晩絞り取るからだと
 言っていたけれども、それだけじゃないのは分かっている。
 原因はあたしの愛すべき妹、サクラちゃんだ。限界知らずなあの娘は、
 覚えたての猿みたいに際限なく絞り取ってしまったんだろう。これは憶測だけれども、
 昨日だけじゃなく今日もやったんだろう。せっかく虎徹ちゃんを一時的に貸してあげたのに、
 持ち主のことを考えないなんて少し浅はかなんじゃないだろうかと思う。
 まぁ、そんな貪欲なサクラちゃんだからこそ、今の計画が成り立つんだけれども。

 あたしがやったことはとても単純、嫉妬に燃えるあの娘の背中を軽く押してあげただけ。
 昔の経験からあの娘がそういうタイプだと分かっていたし、今の姿を見ても
 根っこの部分が変わってないのはよく分かる。だから軽く後押しをすれば、
 必死に策を廻らそうとするのは目に見えていた。二年前はあたしもまだ馬鹿だったから、
 サクラちゃんと一緒に手を出してしまったけれど、
 そのせいで暫く虎徹ちゃんと話を出来なかったのが辛かった。
 今はもうそんなことにはなりたくない、だから一生懸命考えた。
 どうすれば、あの娘を走らせることが出来るのか。
 考え抜いた末、結論は驚く程にシンプルなものになった。それがさっき言った
 嫉妬を扇るというもの、但しいつもの何倍もの密度と何十倍もの量で。
 結果は上々、簡単にサクラちゃんは引っ掛かってくれた。
 副産物として手に入れたのは気に食わないけれど、あたしが虎徹ちゃんの初めてを
 貰うことが出来たのも喜ぶべきことだ。
 そう、あたしがやったことは、計画という言葉にするのももったいない程に単純なもの。
 虎徹ちゃんの初めてを貰って、毎日セックスを続けるだけ。そうすれば青海ちゃんの出現で
 カリカリしているサクラちゃんが動き始めるのは予想できた。あとは虎徹ちゃんとあたしが
 セックスをしているのを見せ付けて暴走させるだけ、何の他愛もない。
 それは余程だったらしく、昨日にはもう虎徹ちゃんとしてしまっていた。

 始まりの部分はとても簡単、現に虎徹ちゃんは少しずつ壊れてきているから。
 青海ちゃんといちゃいちゃとしているのは少し腹が立つけれど、それもあと少しだと思うと
 あまり苦にもならない。計画が進んでいけばあたしにべったりになってくるのは、
 完全に見えてきているから。初期症状は自覚がしにくいと言うけれど、気付いているんだろうか。
 気付いていないんだろうなぁ。
 でも、あたしにはきちんと分かる。体をまさぐってくる手付きや、荒くなっている呼吸、
 ことの最中にあたしの体を眺める目付き。嫌そうに、昨日までは受動的だったキスも
 自分からしてくるようにもなった。わたしの膣内を擦りあげる腰の動きも、
 敏感な部分を弄ぶ激しさも、何もかもが。
 そして何よりも、表情から罪悪感が消えている。
 青海ちゃんへの義理立てや、あたしの体を好きにすることへの恐怖、
 そして近親での性行為への嫌悪感などの今まで邪魔だったもの全てが抜け落ちていた。
 そこに浮かんでいるのは、肌と肌を擦り合わせることを純粋に楽しんでいるという色。
 快楽に染まりきった、一人の男の人だという証がそこにある。
 これで良い。
 これが良い。
 最近になって急に出てきた泥棒猫などに、この愛しい人を渡したくなんかない。
 今までだってずっと一緒に居たから、これからもずっと一緒に居たい。
 物心が付く前からずっと虎徹ちゃんを想い続けてきたあたしにはその資格がある。

 ほら、今も。
 軽く手を伸ばして、虎徹ちゃんの髪を優しく撫でる。三日前に青海ちゃんに撫でられて
 気持ち良さそうにしていたけれど、今の方がずっと安らいだ表情をしている。
 それだけで嬉しさが込み上げてきて、また一つ幸せになった。
 相子相愛、何て素晴らしいんだろう。
 思わずキスをすると、虎徹ちゃんは微笑んであたしの髪を撫でた。
 あはっ、可愛い。
 大分落ち着いてきたと思ったのに、また体が熱くなってきた。それでも構わない、
 先程までのは只の休憩時間ということにしてしまえば良い。
 体を重ねることに回数制限も時間制限も関係ない。少し前までは呼吸が荒っぽかったけれど、
 今はもう落ち着いているみたいだし、多分大丈夫。
 虎徹ちゃんもまだやる気はあるみたいで、あたしが竿を撫でるとすぐに元気になった。
 軽く指で割れ目を掻き混ぜて少しほぐしてから、ゆっくりと虎徹ちゃんの上に腰を据えた。
 休憩に入る前は虎徹ちゃんが上になっていたけれども個人的には
 この体位の方が好きだったりする。今まではずっとこれだったから
 こっちの方が落ち着く気がするし、何よりあたしが今この瞬間虎徹ちゃんと二人きりで、
 しかも繋がっていると実感出来るからだ。
 虎徹ちゃんは動かずに、あたしの意思で降ろしていく。少し恥ずかしそうな表情を見ながら
 擦り合わせるように下げると、固く太く熱くなった先端があたしの中を割って進んでくる感覚が
 とても気持ちが良くて、つい声が漏れてきてしまう。

 あはっ、挿入った挿入った。
 根本まで収まった虎徹ちゃんのものを、うねるようにして擦りあげる。粘膜が擦られる快感が
 股間から全体に伝わってきて、それだけで達してしまいそうになる程気持ちが良い。
 続けて何度も腰を動かすと、それに合わせるように虎徹ちゃんも激しい動きで
 腰を突き上げてきた。子宮の入口がこじられるように圧迫され、
 衝撃と快感でもう何も考えることが出来なくなってくる。
 虎徹ちゃんがあたしの胸を揉んで、吸い、幾つものマークを付けていく。
 自他共に認める白い肌に桜色の模様が出来ていくのは、自分でもいやらしく見える光景だ。
 乳房に付いた唾液が月の光に照らされるのを見ていると、行為の後で拭き取るのさえ
 惜しくなってくる。あたしはナルシストじゃないけれど、淫靡な光景は、
 それだけで価値があるように思えた。
 そして、この模様が虎徹ちゃんのマーキングのように思えて、ついキスをしてしまう。
 口の中をむさぼるように舌を絡めて、唾液の交換をする。天上の甘露のような
 虎徹ちゃんの唾液と、あたしの唾液を呑むのは同時。身体中に浸透していく気がするのは
 きっと虎徹ちゃんも同じだろう。何度もそれを繰り返す、
 虎徹ちゃんがあたしのものだという事実を全身に伝わらせていくように。
 もう、大丈夫かな?
 一旦口を離して顔を見つめる。
 あたしの唇と虎徹ちゃんの唇の間に繋がった透明な橋が切れるのを惜しいと思いながら、
 それでも唇を動かした。
 青海ちゃん。
 声で伝えずに唇の動きだけでこの単語を伝えると、軽く笑ってあたしの喉を舐めあげてきた。
 喉から口の端にかけて、溢れ出た唾液を拭うように舐めて、最後にはキスをする。
 それでまた唾液が溢れたけれど、気にしない。
 数秒。
 舌の動きが一瞬止まり、熱いものがお腹の中にぶちまけられる。それからワンテンポ遅れる形で
 あたしも絶頂に達した。
 虎徹ちゃんのものを引き抜きながら胸の上に倒れ込み、体温が消えるのを
 少しでも防ぐように抱き締める。このままほどかずに、いつまでもこうしていたい。
「もう、離さない」
 小さく囁いた言葉は、聴こえただろうか。


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