とらとらシスター 第18回
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 兄さんが姉さんと絡み合っている。
 この光景を見たときに、最初は自分の正気を疑った。現実であってほしくない、
 そんな私の意思を完全に無視して行為は続けられていく。
 目撃してしまったのは只の偶然。理由は分からないけれど兄さんは体調が悪そうで、
 今日は学校を休んでしまった。口では大丈夫だの心配するなだの言っていたけれども、
 明らかにフラフラだった兄さんがとても心配だったから、寄り道もせずに早めに帰宅した。
 泥棒猫ごときにあまり感謝はしたくないけれど、変な部分で頑固者の兄さんを説得して
 家に返してくれたことだけは評価してやらないこともない。
 だけれどもやはり昼に兄さん成分コテツミンの補給が出来なかったことは事実で、
 帰宅して早々に兄さんの顔が見たくてたまらなくなった。ついでにもし食欲があるのなら
 夕食に何が食べたいのかを訊きに部屋に向かうと僅かに開いた戸の隙間から
 兄さんと姉さんの声が聞こえてきて、ついつい覗いてしまった。
 そうしたら眼前にあの光景が広がっていた。
 もし、普通に夕食の支度をしに台所へ向かっていたのなら。
 もし、放課後の掃除がなくてバスが一本早かったのなら。
 逆に、姉さんの帰宅がもう少し遅かったのなら。
 もし、兄さんが寝ていたままだったら。
 もし、戸が閉まったままで声も只の寝言だと部屋の前を通り過ぎていたら。

 様々な可能性があるけれども現実は残酷に他の道を切り捨てて、
 辛い景色を私の脳髄に何度も何度も刻みつける。視覚だけじゃない、
 鼓膜を震わせる声や水っぽい音、僅かに漂ってくる男と女の匂い。
 全てが私を絡めとるようにまとわりつき、思考を埋めつくす。
 何故ですか。
 心の中の兄さんに問掛けても、答えが返ってこない。それどころか、
 いつもなら簡単に浮かんでくる筈の微笑すら靄がかかったようにぼやけている。
 昼に兄さんとお弁当を食べることが出来なかったからだろうか、
 それとも朝に泥棒猫が兄さんを独占していたからか。
 考えても、結局答えは出てこない。
 早く、立ち去らないと。
 これ以上見ていたくなくて、部屋から離れようとした。
 何で、ですか。
 足が全く動かない。膝が震えて力が入らないのに、姿勢だけは直立不動という
 不思議な状態になっている。せめて視線だけは反らそうと思ってみても、
 視界は二人の行為に釘付けになっていて反らせない。瞬きすら忘れたように目が開き、
 擦り合わせる肌を見ることに夢中になってしまっている。
 水音。
 足元から聞こえた音が気になったが、何なのだろうか。
 濡れて、きたんですね。
 顎や喉を伝う唾液の感触や、下着から溢れて太股を伝う愛液の感触はくすぐったいと言うよりも、
 ただひたすらに気持ちが良い。普段なら不快だとさえ思ってしまう雫が滑り落ちる感覚が、
 体を熱くさせていく。

 気が付いたら、指が下着の上をなぞっていた。私のこんな光景を見られたくなくて
 必死に声を出すのを堪えているのに、指はそれを邪魔するかのように動きに激しさを増して、
 淫らな音をかきたてる。ただでさえ多い蜜の量は加速度的に増してきて、
 もはや指先だけでなく掌をも濡らして手首にまで到達していた。
 浮遊感。
 一度限界に達し、膝から崩れて床に座り込む。冷たい感触を快いと思いながら、
 もたれるように壁に頭を乗せた。しかし体勢が変わっても視線は兄さんの部屋の中から
 外れてくれない、まるで天命のように釘付けのままだ。
 駄目です、ここから離れないと。
 立ち上がろうとしても足は言うことを聞かないままで、僅かに体をよじらせるだけの状態に
 なってしまう。それだけのことならまだましだったかもしれないけれど、
 唾液と愛液の水溜まりにまだ熱い股間を擦りつけることになってしまった。
 ぬめる感触が気持ち良く、指は再び股間へと伸びていく。もう、止まらない。
 瓶に入れずに床に広がる蜜をもったいないと思ったけれども、
 容器を取りに行くとそこで終わってしまう気がして続けてしまう。
 少し続けて布越しに触るのももどかしくなり、下着の中に指を入れ直で割れ目をなぞり始めた。
 途端にそれまでとは比べものにならない程の刺激が来て、
 それだけで絶頂を向かえてしまいそうになる。押し殺しているけれども、
 声も少し出てしまったかもしれない。

 吐息と膣を掻き混ぜる音が脳の中で響いて、それが私と兄さん達のどちらのものかも
 分からなくなってくる。いや、どちらのものでも良いのかもしれない。
 大きく息を吐いたとき、視界の中に変化が起きた。
 バレて、しまいましたか。
 対面から背面へ姉さんが向きを変え、こちらを見てきた。いや、多分思い過ごしだろう。
 正確にはこちらを向いているのではなく、部屋の入口に目を向けているだけだ。
 気付かれていない筈だし、気配も消しているからここに居ることにも気が付いていない筈だ。
 普段はもう台所で夕食の準備をしている時間だし、向こうもそう思っているに違いない。
 だから、大丈夫な筈です。サクラ、逃げてはいけません。
 無理に言い聞かせるようにしながら、思考の途中も動かし続けていた指を加速させる。
 秘所の周辺をなぞり、撫であげ、膣の中を擦って掻き混ぜて、豆を摘み捻りあげる。
 尻の穴の周りを撫でて、軽く爪を立てるようにひっかいた。
 前と後ろの穴に指を差し込んで同時に責めると、思わず声が漏れそうになった。
 空いている指を喰え、必死に声を出すのを我慢する。指先に軽い痛みが走り、
 見てみると薄く血がにじんでいた。
 そんなこちらのことを知りもせず、兄さん達の行為はどんどん激しくなっていく。
 姉さんが腰を突き出すように後ろに上体を傾け、割れ目に兄さんが
 出たり入ったりしているのがはっきりと見える。

 結合部から潤沢に蜜が溢れ出してきていて、小さな滝のようになっている部分の下には
 いやらしい液で出来た水溜まりがあった。それを作る音が大きくなり、
 二人とも限界が近いことをはっきりと表している。
 不意に、目が合った気がした。
 それも一瞬のことで、すぐに私と姉さんとの視線がずれる。最初にこちらを向いたときと同じで、
 もしかしたらただの勘違いかもしれない。行為を止める訳でもなければ、
 特に何をしてくる訳でもないし、そもそも顔を動かしたときに偶然こちらを通過したと
 考えるのが普通だろう。
 本当にそうでしょうか。
 僅かに残っている理性の部分が、何度も問掛けてくる。
 大丈夫ですよ。
 そう、大丈夫。ストロークが更に短くなり、それに反比例するように激しさを増したのも
 絶頂が近いからだ。同じ女だから、小さく割れ目が痙攣しているのを見れば分かる。
 目が合ったと思ったたときから何度もこちらを見ているような気がするのもきっと偶然、
 体を大きく動かしているから視線の揺れが激しくて、その途中でこちらを通過しているだけだ。
 全てが偶然、それだけ。
 だから、ここで見ていても構わない。
 自分を慰めていても、問題無い。
 狂っように股間をいじっていると、やがて向こうに終わりが見えた。姉さんの体が大きく痙攣し、
 それに僅かに遅れるようにして兄さんの体が小さく震えた。それに呼応するように、
 私にも絶頂が訪れる。
 股間の割れ目から指を抜いて、脱力した体を支えるように壁に手を着いた。
 目が、合った。
 今回ばかりは勘違いじゃない、しっかりと戸の隙間を見つめている。
 姉さんは膝立ちになると、私に見せつけるように腰を前に押し出して割れ目を指で開き、
 妖しい笑みを浮かべた。やけに紅く見える唇から囁くような笑い声が漏れるのと同時に、
 割れ目から兄さんの精液がごぽりと溢れてくる。
「羨ましい?」
 小さな声で呟いた筈の姉さんの声が、やけに大きく聞こえた。


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