とらとらシスター 第5回
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 お家に帰ってあたしは一息吐いた。
 虎徹ちゃんには泥棒猫の匂いを落とすために、お風呂に入ってもらっている。サクラちゃんは
 お母さんと晩御飯の支度、あたしと言えば暇を持て余していて呑助ちゃんと戯れていた。
 最初は虎徹ちゃんのお布団に図々しく入るこの子が嫌いだったけれど、今は好き。
 二人と一匹で寝ていると、新婚夫婦に思えてくる。そうなってくると不思議なもので、
 途端に愛らしく見えてくる。
 あたしと虎徹ちゃんの子供もこんな風になるのかな?
 前足を摘んで遊んでいると、そんな幸せな光景が浮かんできた。
 でも、少し不安もある。
 泥棒猫、サクラちゃんは織濱さんをそう呼んでいた。いつもいつも口を開けば酷い言葉を吐くけれど、
 今回はなかなか面白いと思った。同じ猫の名前でも呑助ちゃんとは大違い。
 こっちが天使なら、あの娘はあたしと虎徹ちゃんを引き剥がす悪魔だ、許せはしない。
 殺してやる。
 一瞬物騒な言葉が頭に思い浮かんで、慌ててそれを否定。何故か脅えた様子の呑助ちゃんに
 笑いかけると軽くキス、そう言えばこれって虎徹ちゃんと間接キスだと思うとあたしの心は
 幸せに包まれた。心も嵐から凪に、これで良い。あたしはお姉ちゃんだから、毎回
 すぐに怒りだすサクラちゃんのようなことはしない。
 何で、いつもいつも。
 でも、今日は少しかわいそうだったなぁ。あたしは未来設計を言ってもらって嬉しかったけど、
 怒られていたサクラちゃんは少し辛そうだった。自業自得と言っちゃえば、もうそれまでだけれども。

 そんなことより、もう一つ大事なことがある。真剣な表情でお説教をする虎徹ちゃんは、
 久し振りに見たこともあって更に格好良く見えた。いつものにこにこ笑ってお説教をする虎徹ちゃんも
 良いけれど、真面目な表情なのも大好き。
 その表情を思い出していたら、自然に片手が股間に伸びていた。下着の中に手を差し込んでみると、
 既に洪水と呼べる程に愛液が溢れ出ていてすぐにでも指がふやけそうになる。
 昼間に虎徹ちゃんが言っていた言葉を思い出しながら、指を入れて掻き混ぜる。それだけのことで、
 あっというまにイッてしまった。
 だけれども、まだ足りない。はしたないと思うけれども止まらないものは仕方がない、
 それだけあたしの未来の旦那様は魅力的。薬も過ぎれば毒になると言うけれども、
 それは本当かもしれない。それとも、もともと薬物のように毒なのかも。
 どっちでも良い。
 今は、快感に身を任せるだけだ。
 不意に、思いつく。
 いつのまにか手を離していた呑助ちゃんにキスをする。どうやら、無意識の内にキスをしまくって
 いたみたいで小さな口の周りはベトベトになってしまっていたけれども、気にしない。
 これからすることを考えていたら、その程度では済まないから。
 股間で動かしていた指を抜くと、呑み助ちゃんに舐めさせる。それだけでは足りないから、
 優しく撫でるとあたしの股間まで動かし、直接舐めさせた。

 瞬間。
 虎徹ちゃんが口を付けていた部分が触れたという事実と、これから間接的にでもそこに
 虎徹ちゃんの口が触れるという意識で絶頂に達してしまった。体が弓なりになって、
 押し殺していた声が漏れる。
 呑助ちゃんが口を付けていたのは一秒にも満たない時間だったけれども、それでも満足をした。
 引いていかない快感と絶頂の余韻に、呼吸がいつも以上に乱れているのが分かる。
 数秒。
 呑助ちゃんの顔を秘蔵の虎徹ちゃんの使用済みタオルで拭いつつ呼吸を整えていると、
 ノックの音がした。その音からして、相手は虎徹ちゃん。いつも長いのにもうお風呂から出たんだ、
 と思って時計を見てみると、既に一時間は経っていた。
 再び聞こえるノックの音に慌てて返事をすると、着替えを持って部屋を出る。
 お風呂場に向かう途中、なんとなく気になった。この家は防音がわりとしっかりしているけれど、
 声を聞かれたかなと思って後ろを振り向くと虎徹ちゃんが呑助ちゃんとキスをしていた。
 あたしの唇や唾液、股間の割れ目や愛液が付いた部分に口を付けている。
 我慢出来ない。
 あたしは液が太股に垂れてくるのを感じると、早足でお風呂場に向かう。途中で擦れ違った
 サクラちゃんが妙な表情を向けて何かを言っていたけど気にしない。
 やっと着いた。

 あたしは速攻で服を脱ぐと、洗濯籠の中を見た。そこに入っているのは虎徹ちゃんの脱いだ洋服、
 下着もちゃんと入っている。これがあたしが洗濯係を選んだ理由、このくらいの役得は
 あっても良いよね。下着やシャツを手に取ると顔に押し付け、匂いを思いっきり吸う。
 脱ぎたてと言うには少し時間が経ちすぎているから体温が残ってないのは少し残念だけれども、
 それでも充分。匂いを堪能したあとに、だらしなく垂れてきた股間の液を拭う。
 それだけで、再び快感が押し寄せてきた。
 イッちゃった、でも、まだまだ。
 これはもう癖と言うよりも、日常だ。あたしは虎徹ちゃんのシャツとパンツを着ると、
 そのままお風呂場に入った。
 シャワーの蛇口を捻り、全身にお湯を浴びる。温かく濡れた服が体に張り付いて、
 全身を抱き締められ、舐められている感覚。言葉では表現できないくらいの快感に身をよじらせると、
 布が擦れてまた気持ち良くなる。脱出不可能、快感の無限ループに酔いしれる。
 いけないいけない。
 あたしは一番大事なことを思い出すと、一旦シャワーを止めた。そして服に洗剤をかけて
 胸を揉み始める。これはいやらしいことじゃなくて、奥さんとしての義務。愛する人の衣服を
 丹念に手揉み洗いしているだけ。全身を使うのはより綺麗にするため、そして虎徹ちゃんが
 いつも良い匂いと笑ってくれるようにするためだから気は抜けない。特に今日は泥棒猫が
 寄ってきたから念入りに綺麗にしないとね。

 数分。
 多目にかけた洗剤がぬめって気持ち良い。けれど、まだ足りずに結局股間をいじり始めてしまった。
 だらしないなぁ、と思うけれども体は正直。
 いや、違う。
 正直なのではなく、きっと正解を選んでいるんだ。あの泥棒猫が二度と近付かないように、
 匂いも消えるように、あたしの匂いがしっかりと付くように。そうすれば虎徹ちゃんも、
 もっと喜んでくれる。だから頑張らなきゃ。
 数十分。
 暫く続けてもう体が動かなくなり、漸くあたしは手揉み洗いを止めた。これだけじゃあ
 まだまだ足りない気もするけれど、もう限界らしいので仕方ない。今になって、
 部屋で楽しんだことを少し後悔したけれど、最後に良いことをしたから気にしないことにした。
 あ、また。
 思い出して、再び体が熱くなるけれどもう動かない。名残惜しいけれども、
 体に付いた泡を流していく。体にかかるお湯の圧力が気持ち良い、それだけでまた
 愛撫されているような気持ちになり、またイッてしまった。
 だるい体を動かして、虎徹ちゃんが入ったお湯に入る。
 温い。
 少し冷めているけれど、人肌に近い温度で、虎徹ちゃんの体温に感じられる。この温度で
 もう一度したくなったけれど、体が動かないのが残念だった。

 ごめんね、虎徹ちゃん。もう限界なの。
 心の中で謝ると、適当に体を温めてお風呂場から出た。着ていたままが良かったけれども、
 仕方なく服を脱いで絞る。虎徹ちゃんの匂いは消えていたけれども、あたしの匂いは
 たっぷりと付いた筈なので我慢。
 お姉ちゃんだから頑張らなきゃ、駄目なことはしないしやるべきことはやる。
 自分にしっかりと言い聞かせて、体を拭いた。
 でも、
 このことを話したら、虎徹ちゃんは誉めてくれるかな?
 いけないいけない。
 夫婦になった後にじっくり聞かせて驚かそう、そんなことがあったんだって。ささやかな
 夢だからこそ、楽しいし驚きも増す筈だから。楽しみにしていてもらわなきゃ。
 その光景を想像していると、ノックの音が聞こえた。この音は、未来の旦那様。
「ご飯出来たって」
 軽く返事をして、服を着る。
 それにしても、いつ聞いても素敵な声。
 また、濡れてきちゃった。
 今夜も頑張らなきゃ。


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