修羅場。その終わりの方のひとつ 第1回
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あたしはきっと壊れているわ。
だけど、そんな愛しか出来なかった。
昔からそう。つい、手を出してしまう。
人のものが欲しかった。
愛は、奪うもの。それが、あたしの流儀。
彼の顔が、罪悪感に揺れる時、あたしは愛を感じてしまう。
だから、この結末は…きっとあたしに相応しい。
短かったけれど楽しかったわ。

        ※

私はたぶん壊れているの。
だけど、そんな愛しか認められなかった。
昔からそう。つい、むきになってしまう。
誰にも触らせたくなかった。
愛は、縛るもの。それが、私の在り方。
あの人の顔が、私だけを見てくれるだけで、私は愛を感じてしまう。
だから、この結末は…たぶん私に相応しい。
短かったけれど、幸せでしたよ。

        ※

ボクはおそらく壊れているんだ。
だけど、そんな愛しか知らなかった。
昔からそう。つい、意地悪してしまう。
愛は煽るもの。それが、ボクの悪癖。
人の激情が見てみたかった。
彼女達の顔が、嫉妬で歪む度、ボクは愛を感じてしまう。
だから、この結末は…恐らくボクに相応しい。
短かったけれど、素敵だったね。

        ※

「ホトケは?」
「リビングに。こちらです」
「…ふぅ。凄い量の血だな。足の踏み場もねぇ」
「三人分ですからね。フローリングで、床が吸い取ることもなかったみたいですし。
 女性二人は、全身を滅多刺しされたことによるショック死と、頚動脈切断による失血死です。
 男性の方は、心臓を一突き、即死ですね」
「女二人に男一人……痴情の縺れによる大修羅場ってところか?」
「詳しい聞き込みはまだですが、その線が濃いです……ただ」
「ただ?」
「見てもらった方が早いです」
「…南無、と。どれどれ…… ! こいつぁ…」
「ええ、三人とも酷く穏やかな死に顔なんです」

END


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