生きてここに… 本編 Epilogue
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久しぶりに仁くんとデートした
夕暮れの帰り道・・・・
私はある決意を胸に仁くんにこう言った
「愛しています・・・・私と結婚してください」
ようやく言えた・・・・ちゃんと私の気持ち
仁くんは私の言葉に少し不安げな顔をした
「キミのことを俺も愛してる、でも俺は奈々を忘れられない・・・・・」
忘れる必要なんてないよ
仁くんのことがんばければ彼女とはいい友人になれたと思う
だから・・・・私も忘れないよ・・・・奈々ちゃん・・・・
「それに俺は選ぶ側じゃない・・・・選ばれる側だから」
仁くん・・・・・・
「私は仁くんに選んでほしいの・・・・・私を・・・・・」
仁くんは顔を少しうつむけるとゆっくりと上げた
「俺もキミを愛しています・・・・・」
よくよく考えてみれば仁くんの気持ちを聞くのは初めて・・・・
初めて同士だね・・・・
「私と・・・・結婚してくれますか?」
仁くんはなんのためらいもなくうなずいた
ありがとう・・・・・仁くん
私は伝えたいもう一つの言葉を発した
「菜々美ちゃんの・・・・・ママになっていいかな?」
仁くんの目が驚きで見開かれる
少しの間と沈黙のあと私は言葉を続けた
「私が子供を産めないからって無理してるわけじゃないの」
不思議な気持ち・・・・菜々美ちゃんがとても愛おしい
初めて逢ったのは三ヶ月前・・・・
小さな手が見えない瞳で・・・・私と仁くんの指をしっかりと握った
右手に私・・・・・左に仁くん
私の指よりも小さなその手が必死で私たちに語りかけていた
『前を見て・・・・・』
仁くんは泣き出し私も人目をきにせずに泣き喚いた
あの時決めたの・・・・仁くんと一緒にこの子を護っていこうと
「全部俺の責任だよ・・・・奈々のことも・・・・キミのことも」
悲しげな顔のあと仁くんはまっすぐに私を見つめて微笑んだ
「俺と結婚してください・・・・・」
はにかんだような笑みが私をもう一度で迎えてくれた
「喜んで・・・・・あなた」

「ママさま〜、はやく・・・・はやくです〜」
今は少し大きくなった小さな手が私を必死で引っ張る
「そんなに急がなくてもパパは逃げたりしませんよ?」
「帰ってきたときに一番に出迎えたいですの」
ほんとうにパパっこなんだから
この子にはありのままを伝えた
まだ三歳になったばかりのこの子はあまり意味をわかってはいないと思う
今はママが二人いると喜んでいるけど・・・・いつか理解する日が来る
そのときが来ても私はこの子の母でいたい
覚悟はしている・・・・私は菜々美ちゃんを本気で愛しているから
自分を強くもって私はそのときを待つことにしている
玄関に着くと同時にドアが開き待ち人が姿を見せた
「ただいま・・・・詩織・・・・・菜々美」
小さな手が私から離れて彼の元に向かっていく
「お帰りですの〜パパさま〜♪」
彼は菜々美ちゃんを抱き上げてすこしぎこちない笑みを浮かべた
「どうかしたのですか?」
今度は愛想笑い・・・・もしかして!
「その・・・・取引先の人が・・・・外人で・・・・一度芸者を見てみたいって」
「取引相手ではなく・・・・あなたがちやほやされたのでしょ?」
結婚してから彼のモテモテぶりは・・・・さらに増している
「パパさまが愛してるのは菜々美とママさまたちですよね〜?」
菜々美ちゃんに彼が耳打ちしたあと菜々美ちゃんが笑顔でそう言った
「ずるいですね・・・・今回だけですよ?」
「パパさまの今回だけはすっごく多いですの」
可愛い顔して・・・・菜々美ちゃんったら・・・・とどめさしちゃった
「愛してるのは菜々美とママたちだけだぞ・・・・ほんとだぞ?」
二人がゆっくりと私の方へ歩んでくる
小さな手が私の頬に重ねられた
私はその手に自分の手を重ねる
彼も笑んで私を見つめた
菜々美ちゃん・・・・あなた
私はとても幸せです・・・・

 

 

 

 

FIN 『小さな幸せ、永遠に・・・・・』


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