生きてここに… 本編 第20章
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仁ちゃんを騙してしまった
ごめんね仁ちゃん
でもこれは神様が私にくれたチャンスなの
だから私はこの罪を背負ってこれからも生きていくよ
私は覚悟して仁ちゃんと口付けを交わす
仁ちゃんはすべてを受け入れてゆっくりと私を抱きしめてくれた
「抱いて・・・・仁ちゃん」
私がそうつぶやくと仁ちゃんは少し戸惑ったけどうなずいてくれた
静かに服を脱がされる
下着もうまく仁ちゃんは外した
もしかして経験あるの?詩織さんと・・・・
心は覚えていなくても身体は覚えているの?
いまはよそう・・・・あの人のことを考えるのは
やさしい愛撫が私を未知の世界にいざなう
幸せ・・・・
罪悪感をも溶かしてくれる仁ちゃんの愛撫
そして仁ちゃんと私は初めて繋がった
初めての痛みを感じながら私は仁ちゃんとひとつになった

血の付いてしまったシーツを私は抱えて仁ちゃんの病室を後にする
さすがにこれは自分で洗わないと
だって、恥ずかしいし・・・・
でも・・・・仁ちゃんに抱かれちゃった
何度も夢見たその行為を私は現実に仁ちゃんにしてもらった
でも一種の不安もある
いつ仁ちゃんの記憶が戻るかどうかだ
お医者さんの話では戻るかもしれないし戻らないかもしれないらしい
覚悟はしている
それでも私はこの道を選んだ・・・・
だってもう仁ちゃん以外私は愛せないから
身体も心も・・・・
この十字架を背負って私は生きていく
それが愛する人を騙した私の罪
それでも私は・・・・・
愛してるよ・・・・仁ちゃん

「・・・・・」
詩織さんへの未練がない訳ではない
けれど俺は奈々さんを・・・・選んだ
あれほど悲しそうな顔をする奈々さんが嘘を言うわけない
そんなことを考えていると時間は夜になっていた
静かな音でドアが開かれた
「奈々さん・・・・?」
その方向を見ると詩織さんが立っていた
一気に未練が音を立てるかのように噴出した
「・・・・・・・・・」
奈々さんという言葉を聞いても詩織さんはなにも言わずに俺の横の椅子に腰掛けた
「仁くん・・・・・私ね」
少し悲しげにつぶやくと詩織さんは意を決したかのように口を開いた
「私のせいで仁くんが大怪我をして記憶まで・・・・だから!」
顔が寄せられる
綺麗な顔が俺の目の前まで
「・・・・・・?」
俺の首元を見つめる
「キスマーク・・・・」
それは先ほど奈々さんが俺に付けていったものだ
「どういう・・・・こと?」
悲しげな瞳が俺に向けられる
「これは・・・・奈々さんと・・・・」
それを聞くと詩織さんは俺に口付けた
そして舌を絡める
ゆっくりと離れる顔と顔
「私には仁くんしかいないの・・・・・だから!」
その顔にまた記憶がフラッシュバックした
夕暮れの帰り道
俺と詩織さんが口付けている
どうして?・・・・・俺は奈々さんと・・・・・
わからなくなった
「仁くん・・・・私を抱いて」
俺は言われるがまま詩織さんを抱いた
先ほど奈々さんを抱いた時と同じように
それで思ったことがある
俺は詩織さんの身体を知っているっていうこと・・・・
最悪だ・・・・俺、最悪だよ・・・・・
記憶を失う前の俺は最低の二股野郎だったってことだよな?
ごめん・・・・詩織さん・・・・・奈々さん・・・・


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