生きてここに… 本編 第19章
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暗い世界に閉じこめられている
ここは・・・・・どこだ?
俺は・・・・誰だ?
全身が重い・・・・
このまま俺は消えてしまうのか?
自分が誰かもわからないまま俺は消えていく
その存在がはじめからなかったかのように

 

「ここは・・・・?」
瞳を開くと見知らぬ天井が目に入った
「仁くん!!」
「仁ちゃん!!」
二人の女の子の声が俺を出迎えてくれた
痛む首を少し横にすると二人の少女が俺を見つめながら泣いていた
「詩織さん・・・・?それと・・・・この前逢ったよね?・・・・奈々さんだっけ?」
俺の言葉に二人はなにを言っているの?という風に俺を見ている
どうした?俺なんか変なこと言ったかな?

そのあと俺は医者から今の自分の状況を聞いた
俺をストーキングしていた女の人が家族を殺して
詩織さんと俺をも襲ったらしい
俺は詩織さんを護ったいいけど大量の出血で脳が血液不足になったらしい
そのせいで二年前ほどの記憶・・・・つまり奈々さんと逢ってすぐからの記憶をなくしてしまったらしい
今後そのような症状は出ないしふとしたきっかけで思い出すこともあるらしい
簡単な話、軽い記憶喪失だ
それから詩織さんは毎日お見舞いに来てくれた
それと奈々さんも毎日来てくれる
でもどうして?聞けば彼女と俺は同じ学校に入学して同じクラスで隣の席らしい
正直な話だが中二までの記憶しかないので俺の中の彼女は儚げなままだった
けど・・・・
「それでね、東児ってばまた女の子に告白してフラれたんだって〜、身の程をわきまえろって言ってやったよ・・・・うん、それでねそれでね」
マシンガントークが続く
こんな生き物だったのか彼女は
けど確かに二年の月日は感じさせる
詩織さんなんてすごい美人になってるし
奈々さんも記憶の中の彼女より女の子らしい可愛らしい容姿になっている
「どうかした?」
無言の俺に奈々さんが首をかしげそう聞いてきた
「いや・・・・・どうして毎日お見舞いに来てくれるのかなって?」
二年前・・・・と、言っても俺にはつい最近のことだがそれがあったにしろ
彼女の俺を心配する目や時々見せる詩織さんへの対抗心
嫌でも見えてくる
彼女が俺をどう思ってるか
ただのクラスメイトじゃないのか?
そう聞けば彼女を傷つけることになるだろう

だから俺は遠まわしにそう聞いてみた
「そっか、覚えていないんだね」
奈々さんは悲しそうにそうつぶやいた
どうして、そんな悲しい顔をするの?
「実はね・・・・私と仁ちゃんって・・・・恋人だったんだよ?」
え・・・・・
俺の好きな人は・・・・・詩織さんのはず
彼女のその言葉にある記憶がフラッシュバックした
奈々さんが俺に後ろから抱き着いて口付けを交わす姿が・・・・
「キス・・・・した」
口にでたその言葉に奈々さんはにっこりと笑んだ
「そうだよ!・・・・思い出してくれた?」
「でも、俺・・・・詩織さんと婚約」
現状の説明でそういう風な話を俺は聞かされていた
詩織さんに確認を取ったが事実だと言っていた
「あれはね、親同士が勝手に決めたことなんだよ?詩織さんは仁ちゃんのこと好きだったからいいけど、仁ちゃんは私のことが好きだったの」
信じられない・・・・でも、俺の見た記憶はそれが事実だと告げている
確かに詩織さんとはまったく正反対の彼女に俺は惹かれたのかもしれない
それほど彼女は魅力的だった
「ねぇ、仁ちゃん・・・・あの時のキスの続き・・・・して」
ベッドに身を乗り出し奈々さんは俺の唇に自分の唇を重ねた


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