生きてここに… プロローグ 第9章
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ああ、眠い
結局あのあとも奈々はいつもと同じように俺に接してきた
なにごともないかのようにいつものように
見えない、奈々の気持ちが・・・・
世間には疎そうなのにな
そうでもないのか?
ああ、結局昨日は奈々のことが頭から離れずに眠れなかった
・・・・?
俺が頭を抱えていると視線を感じた
窓の向こうだ・・・・・
香葉さん・・・・?
なんだろう?彼女はなにか憑き物が取れたように晴れやかだ
新しい恋でも見つけたのかな?
香葉さんはニコッと笑うと何人かの女の子を連れて校舎の裏へ向かっていく
一番後ろの子・・・・あの子たしか・・・・
この間俺に告白してきた子だ
どうしたんだろう?
酷く怯えてるように見える
去って行く大勢の後姿を見送る
・・・・あれ?
詩織さん?なにをやってるんだあの人は
頭に枝を付けて友人とこそこそ木などに隠れて香葉さんたちの向かったほうに向かっていく
なんか、マヌケだな・・・・でもなんかギャップで可愛らしく感じるよ

でも、なにをやってるんだ?
疑問はすぐに解く
それが俺の信条だ
立ち上がると俺は教室を出た
「仁ちゃん?どこ行くの?授業始まるよ?」
「なんだ?面白いことでもあったのか?」
奈々と東児が俺に追いかけてきてそう言う
奈々はまあ俺を心配してのことだが
東児は退屈しのぎだろ・・・・こいつ
「とりあえず、一緒に行こうか?」
俺の第六感みたいな物がその方がいいと告げていた

やっぱり・・・・おかしいよ
任せてと言った先生は昨日の夜から行方不明らしいの
昨日の夜は彼女の家に行くはずだったらしい
なにかあったんだろう
怖い・・・・怖いよ仁くん
でもね、最後の最後までやってみるよ
仁くんのこともあるけどなにかあの人には他の人にはないモノを感じる
いじめ?そんな半端なものじゃない
私の勘がそう告げるの
彼女は・・・・もう壊れているのかもしれない
やっぱり怖い、でもがんばれ詩織
ここで負けてはダメ
変わるんだ、私は仁くんに相応しい女になる
そのためには私が強くならなきゃ
自分を強く持たなくちゃ

ああ・・・・やっぱり
またイジメが繰り広げられる
木刀を何度も叩きつけている
どうして?どうしてそこまでできるの?
なにがあなたをそうするの?
目が殺気立ってる・・・・・すごく怖い
横の友達も怯えている
仁くんに助けを・・・・だめ!
自分でなんとかするの・・・・
私は頭に付けた枝を地べたに置くと少しずつ近づいていった
仁くん・・・・私・・・・・強くなるよ!
「あら、またあなたなの?」
なに?この殺気
すごい、まるでテレビに出てくる凶悪犯の目だ
怖い・・・・・怖いよ
木刀が地面に引きずられて
その先が私に向けられる
「あなたに・・・・なにが出来るの?」
挑発的なその目
その目はかつて見た負け犬の目じゃない
凶気に満ちたその目
「あなた・・・・自分がしていることがわかってるの?」
彼女は冗談とばかりに笑んだ
どうしてそこで笑えるの?
え・・・・なに?
木刀じゃない・・・・・
ポトンと木で出来た刀身が落ちた
出てきた本物の刀の先が私に向けられる
「私が切り刻んであげる・・・・・あなたを狩ってあげる」
その顔はこの世の悪魔だった


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