the scene of pandemonium 第1回
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キーンコーン……
五時間目の授業が終わり、同時に目が覚める。うん、良き睡眠かな。
「くぁ…」
背伸びしながら欠伸をしていると……
「よ!俊太!相変わらず爆睡街道まっしぐらだな。」
「なんだ…北斗か……いきなり大声出すなよ。」
後ろから声をかけてきた野郎、『秋谷北斗』。所謂幼馴染みって奴だ。
幼稚園から高校まで全部同じクラスと言う奇跡をたたき出した。
「なんた〜?相変わらずアンニュイなやっちゃなぁー。オッケ!ゲーセンいっか!!」
まぁ、俺みたいな性格にはこういう奴が一番あうのかもしれないが。実際うるさいがいい奴だ。
「あれ?だってお前、麗奈ちゃんと約束あるって…」
「あーあー!いいんだよ!女より男の友情。それ、優先第一位。麗奈のやつなんざまた明日にでも……」
「明日にでも…なに?」
合掌
これで今日のゲーセンは無しだな。
「あ、あららぁ〜。麗奈ちゃぁーん。どったの?そんな怖い顔しちゃって。」
その怖い顔の主、小林麗奈。北斗の『正式な』彼女だ。何故正式をつけるかというと……
「ホックン、テニス部の後輩にまた手出したでしょ…」
「え?…っとぉ〜…テニス部、テニス部………加奈ちゃん?あ、ちが、それ美術部だ……」
「こんの浮気物!!!何度言われれば気が済むのよ!!!」
「いたたたたた!!!ギブ!!ギブ!!」
女ったらしというやつだ。まぁ、たらしとはいえ、他の女の子との付き合いは浅い。
せいぜい一緒にお茶でもってあたりだ。麗奈ちゃんの事はちゃんと好きらしいからな。

「俊太!!ぼーっとしてないで助けを……」
「心配すんな。保健室、空いてるぞ。」
「ぐあぁぁぁ!!!」

 

ゴキッ!
あちゃぁ。鈍い音。これで本当に保健室送りだな。まぁ、見舞いに行くのは野暮だろう。
今日はこのまま帰ってぐっすりと………
「あ、あ、あの、あの。俊…太君!!」
おっと。この吃りかたは……
「やぁ、紗那ちゃん。どうしたの?」
小動物みたいな少女、岡崎紗那。中学、高校と同じクラスで、顔を合わせれば話すってぐらいの仲だ。
ただ、高校に入ったぐらいから、話す時に落ち着きが無くなったような気がする。
「え、あ、あのね、これ、担任の江川先生の所に持って行って欲しいの。」
そそくさとプリントを渡される。
「えー?……なんで俺が…」
「よ、よろしくねぇ!」
文句を言う前に去ってしまった。うーん、我が儘だなぁ。
「なんで俺が…」
「恐らく、なんらかの会話をしたかったのだろう、俊太と。」
いきなり北斗が沸いてきた。
「うわ!…いつの間に……麗奈ちゃんはどうした?」
「1ラウンドK.oでダウンしている。試合会場は保健室だ。」
ニヤリ
「生々しいな。」
ニヤリ
「ああ、実に生々しい!」
これで会話が通じるってんだから、幼馴染みも便利なもんだ。
「ところで紗那ちゃんの事だが…」
「あぁ…プリント渡したら走っていっちゃったよ。相変わらず忙しい子だね。
…中学のときもあんな感じだっけ?」
「いや、彼女は中学から変わらず、しっかり者だぞ。…お前の前だけだ、あんなに緊張してるのは。」
「は?なんで俺だけ?」
そんなに忙しそうに見えるのか?俺。
「はぁ〜〜〜〜〜。まったく。お前は亀さんだな。」
出た。北斗の意味不明なたとえ。
「なんだよ…それ。」
「鈍いってことさ。」
…俺の何処が鈍いんだ?


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