義姉 〜不義理チョコ パラレル〜 第15回
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『モカ』

 本日最後の授業は終わり軽く鼻歌混じりに校門へと向かおうと教室をでたら彼女――三沢さんが
 そこにいた。
 雰囲気・場所からも行って待ってました感じかな。普段挨拶すらしない無視すればいい関係のはず
 なのに俯き気味の彼女から出る空気でうっかり私は足を止めてしまった。
 今から何事もなかったように歩きはじめてもいいかな――そう思っても一度止めた
 えーと、第一声は何かな……か、返せって言っても返さないからね!
 いきなりビンタ? それともグー? いやまさか学内で刃物沙汰って事は……
 ビクビクと、しばらく待つが彼女から何も行ってこない。彼女の顔を見れば目をきつく閉じて体が
 小さく震えていた。
「えーと……私行っていいかな?」正直言ってこんな空気から一秒でも早く逃げたい。
 返事はない。数秒待った結果彼女を大きく避けるようにして歩いていった。

 正直言ってこういうのって気分良くない。
 別に騙したり――嘘ともとれることはいったけど、カノジョいるのに寝取ったり
 ――夜這いはかけたけど、まあ……とにかく後ろ指さされるような事はしてないんだけど。
 んー、誰か適当な友達でも紹介してあげた方がいいのかな。
 ――嫌なことはさっさと忘れよっと。今日はとっておきがあるんだから。

        *        *        *

 モカさんの部屋には何というか独特の空気がある。女の子部屋だからというのか、そういうものだと
 思ってたが今日匂いの元であるポプリが置かれているのを発見した。姉ちゃんの部屋にはあったかな、
 こんなの。
「ちょっと目閉じててくれる?」
「いいですけど?」
 いつも挨拶代わりにしているキスなのに目を閉じてとしては妙に改まった感じがする。そう思いながら
 頭をおろし目を閉じて静かに待つ。
 慣れた唇の感触の代わりに頭に何かかぶせられた。感触からしてプラスチック製のカチューシャの様な
 気がする。
 頭の上に手を伸ばして触ってみると何か毛のついた三角形のものがあった。
「ネコミミィィー!」
 薄目で見てみると目の前でなんかが悶え狂っていた。
「えーと……」
「違う! にゃー!」
「へ?」
「ネコだから『にゃー』」

 モカさんにほお擦りされている――モカさん曰く猫だからスリスリしなきゃダメとの事。
「あの――モカさん」
「『にゃー』忘れてる」
「……モカさんって姉ちゃんとケンカしたことあるんですか……にゃー」
 ぐっと恥辱に耐えつつ言葉を吐き出す。
「涼子と? まあ士郎君より付き合い長いから結構したけど。士郎君ケンカでもしたの?」
 ケンカとは少し違うのかもしれない。でも、何かが違っている。だから前みたいに元通りになりたい。
「その――仲直りってどうやってしてましたか……にゃー」
「んー、大体はお互い頭冷えたら何事もなかったようにケロッとした顔で話すのが殆どだったけど」
 オレもそうだったはずなのに――
「謝るんならさっさと謝った方がいいよ、よっぽど頭に来ている時はともかく素直に謝れば大抵許して
 くれる子だから。後にゃーはもっとナチュラルに」
「……にゃー」

 呼吸を大きく整えて姉の部屋の前で大きくノックを二度する。
 しばらく待つが返事はない。でも部屋にいるのは分る。
「……入るよ」
 震える手でドアノブを回す。
 家の中でもすれ違う程度でしか顔をあわせていなかった姉がそこにいた。
「――誰が入っていいって言った?」そうつまらなそうに一瞥をくれた後再び文庫本に目を戻していた。
「いや、あの――ごめん……」
 他に何か言わなきゃいけない事があったはずなのに、頭の中が空っぽになってそれ以上言葉が
 続かなかった。
「……なにが?」
 その返事に対して自分の口が動かない。
「なにが『ごめん』なの。あんたよく分ってなくても適当に謝れば許してもらえるって思ってるでしょ。
 そういうのって一番ムカつくんだけど」
 苛立ちを隠さない声でぶつけてくる。それでいてこちらには目さえ向けない。視線は文庫本へいった
 まま話してくる。
「いや……だから……」
 はっきりしない自分の口目掛けてさっきまで姉ちゃんの手にあった文庫本が飛んできていた。
 姉の顔は怒りで歪んでいる。
「……ごめん」
 もうそれ以上何も言えなくなっていた。何がいけなかったんだろう、そう思いつつ姉に対して
 背を向けていた。
 何がいけなかったんだろう、そう思いながら泣きたいのを堪えつつ部屋を出よう
 背を向けていてもわかる。姉ちゃんが近づいてくる。
 ――背中に抱きつかれている。

        *        *        *
『涼子』

 クソッ! クソッ! クソッ! 何でこいつの顔見ていると苛立ってくるんだ。
 背中から抱きつきシロウのベルトをすばやく外す。重力に従いズボンは一気にずり落ちた。
 そのままシロウの足を払い床にうつ伏せに転がしてパンツをズリ下ろす。
「抵抗したら只じゃおかないよ」
 頭を床に押さえつけつつ、もう一方の手でベッド下からバイブを引っ張り出す。
 狙いを定めシロウの菊門目掛けてバイブを押し込む。強い抵抗があるが無視してさらにねじ込む。
 シロウの口から声にならない悲鳴がこぼれた。
 目を閉じ歯を食いしばり苦痛に耐えている――フン、泣き叫んでみなさいよ。
 モーター音が流れ出すとシロウの表情が変化した。ふーん、こいつってこういう顔するのか。
 シロウの反応を観察しつつ掻き回す――なんだ感じているのか。

 ――どのぐらいこの退廃的に遊びを楽しんでいたのだろうか。
 涙を流し鼻水と涎を垂らしながらもこいつは何も言わない。
 こういうのも穴兄弟って言うのかな――


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