歌わない雨 緑Side2
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私を伸人が振って数分後。自分の家に帰り、部屋には私一人が残った。
朝食も既に伸人と食べ終え、学校に行く時間までは少し暇を持て余す。
「振られちゃったか」
一人で居る部屋の静けさと共に、その事実だけが染み込んでくる。
悲しい。
辛い。
苦しい。
どの口がそんな事を言ったのだろう。到底言える義理ではないし、自業自得そのものだ。
しかも、それは伸人も同じで、もしかしなくても私より辛かった筈だ。
それでも、伸人は悲しんでいる私を抱き締めてくれた。キスをしてくれた。
帰り際に、明日も明後日も、ふっきれるまで料理を作ってくれと言ってくれた。
そして、私が伸人を好きだったことをずっと覚えてくれると言ってくれた。
「私は、馬鹿だった」
初恋なんて、とっくの二年前のことで終わっていたのに、そんなことにも気付かずにしがみついて。
でも、それでも伸人は優しくしてくれた。助けてくれた。
だから、今までのようには行かないかもしれないけれど、
振り向いてもらうのも無理だと分かっているけれども、
せめて伸人を助けてあげようと決意した。 だから私は覚悟を口に出す。
「私は、伸人が…」
好きでした。
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