Why Can't this be Love? 第7回
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「なぁ、美嬉」
「なあに、紅司クン」
 ある日の休み時間紅司クンが人目を避け囁くようにそっと話し掛けてきた。
「美嬉はさぁ今のままで別に良い訳?」
「今のままって?」
「いや、夕子のことなんだけど。 若し邪魔なら俺からあいつに言っとくけど……」
「ううん、邪魔だ何てそんなことないよ。
むしろ紅司クンを通じて白波さんとお友達になれてとっても嬉しいくらいよ。 それにね……」
「それに?」
「うん、紅司クンって一人っ子でしょ?」
「ああ、それが?」
「あのね、友達が彼氏のお姉さんや妹さんと仲良しなのチョット羨ましいな、って憧れがあったの。
 だからね紅司クンのお姉さんや妹さんじゃないけど、
 まるで姉妹みたいに仲良しな幼馴染の白波さんともお友達になれて嬉しいんだ。
 白波さんを通じて紅司クンの知らない側面を知れるのも嬉しいし」
「そうなの?」
 紅司クンは意外そうな顔で問い返してきた。
「うん。 だから今の状況とっても楽しいんだ」
「そうか。 うん、まぁお前が不満が無いならそれでいいんだ」
 そう、白波さんを通じて紅司クンと普通に付き合ってただけでは見えない色んな側面も見れて。
 お陰でとっても楽しくて充実してる。

 でも幸せで楽しいだけかと聞かれればチョット違うかも。時々思うときもある。羨ましいな、って。
 白波さんは私の知らない紅司クンを知っている。 私には無い紅司クンとの思い出を持ってる。
 幼馴染と言う、私と紅司クンとの間には無い沢山のもの……。
 そんな白波さんが羨ましくて思わず嫉妬しそうに、そして時に劣等感を感じそうになる。
 もし白波さんが紅司クンを好いていたらきっと私なんか敵わないんだろうな、って。
 でもそんな感情抱くなんて間違っているし、白波さんに申し訳ないものね。
 白波さんはあくまでも紅司クンの幼馴染。 それを証拠に私ともとても仲良く接してくれる。
 だから私は彼女の事も大好きなのだ。
 白波さんの事も含めて紅司クンとの幸せな日々を私は噛締めている。

 ある日の事、いつものように三人でお昼ご飯を食べてると白波さんが切り出してきた。
「ねぇ、隣町にあるテーマパークなんだけど、実はチケットが手に入ったから今度遊びに行かない?」
「わぁ、楽しそう」
 私が声を上げると続いて紅司クンも口を開く。
「良いね。 何時にしようか?」
「今度の日曜日なんてどう? 実は丁度其の日イベントもあるんだ」
「え? 日曜日?」
「何だ美嬉 今度の日曜だと都合が悪いのか?」
「う、うん実は用事があって……」
「そうか、じゃぁ別の日に……」
 紅司クンがそう言おうとしたのを私は慌てて遮る。
「待って。 そんな、折角其の日限りのイベントもあるみたいだから勿体無いよ」
「でも……」
「私の用事も丸一日じゃないから、用事が済み次第駆けつけるから、ね?」
 私がそう言っても未だ紅司クンは未だ決心がつかないみたい。
 私を気遣ってくれる優しさは嬉しいけど、でもそのせいで縛ったりとかしたくないから。

「ほら紅司。 藤村さんもああ言ってるんだし。 じゃぁ藤村さん、チケット渡しておくね。
 遅れても良いから出来るだけ来てね」
 そう言って白波さんは私にチケットを差し出す。
「ありがとう。なるべく早く駆けつけれる様にするから二人共気にしないで先に行って楽しんでてね」

 当日、二人と遊びたかった私は用事をほんの少しだけど早く切り上げる事が出来た。
 そして二人を見つけた私は駆け寄ろうとしたのだが思わず足が止まってしまった。
 二人の間の距離があまりにも近すぎて……。
 ううん、幼馴染なんだから、兄弟姉妹みたいな仲なんだからそんなの何もおかしくない。
 其のはずなのに……。
 私の足はまるで地面に張り付いたみたいに動いてくれなかった。
 私がまるで石像のように動く事も喋る事も出来ずにいると白波さんが紅司クンの腕に抱きつき
 腕を絡め、そして顔を近づけ……。

 私は思わず駆け出していた。 まるでその場から逃げるように。
 その時私の目には二人の距離がまるで恋人同士みたいに見えて……。
 そんなわけ無いと分かっているのに、分かっているはずなのに……。

 次の日の朝、私は憂鬱な気分で朝を迎えた。 結局昨日は二人の下へ行けなかった。
 そして、その日を境に私は白波さんに対し今までのように接する事が出来なくなってしまった。
 白波さんの様子は今までと何一つ変わりない。
 だけど、私の中の白波さんに対する気持が、意識が変わってしまったから。
 白波さんの紅司君に対する気持は本当に幼馴染としてのものだけなのだろうか。
 やっぱり白波さんも紅司君の事を異性として好きなんじゃないのだろうか。
 そんな疑いの念が浮かんでしまう。
 そんな疑いの気持ちがお腹の底で渦巻いてしまって白波さんの顔がまともに見れなかった。
 白波さんに対してだけじゃない、若しかしたら、まさか紅司クンも白波さんを……。
 若しかしたらこの二人は私が思ってるような単なる幼馴染なんかじゃ……。

 違う、そんな訳ない。 そんな風に考えるのは白波さんに対しても紅司クンに対しても失礼だ。
 そう思っても私の心は……。

 イヤでたまらなかった。 私のこの醜い気持が、疑心暗鬼が。
 こんな気持のままでは白波さんには勿論、何よりも紅司君にも顔向けする事が出来なかったから。


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