Why Can't this be Love? 第4回
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「今日は色々疲れたなぁ……」
 部屋に帰りついた私はそのままベッドに倒れこみそして仰向けになって天井を仰ぐ。
 先輩と別れて、それでそのまま其の脚で紅司の家に告白しに行って……。 
 無事思いを伝える事が出来て、紅司からも好きって言葉聞けて……
 でも交際をOKしてもらえたわけじゃないんだよね。
 誤算だったな。 紅司の中で藤村さんの存在が想像以上に大きくなってたなんて。
 てっきり直ぐに別かれて私と付き合おうって言ってくれると思ったのに。
 でもきっと上手く行く。 私が紅司じゃなきゃ駄目だったように、
 紅司も私じゃなきゃ駄目だって気付いてくれるはず。
 私の言ったこと理解して解ってくれるはずだ。 紅司自身の為にも誰と付き合うのが一番いいのかを。

 

   X    X    X    X   

 昨日は良く眠れなかった。 原因は昨日夕子に言われた事が頭の中にこびりついてた為だ。
 夕子からの告白。 嬉しくないと言えば嘘になるだろう。 なんと言っても初恋の女の子だし。
 本来なら喜んで交際をOKしたいぐらいだった。 ――けど。
「今更言われたって……」
 確かに俺は夕子のことが好きだった。 友達として出なく女として。
 でも其の想いはあいつにその気が無いとわかった(結局は勘違いだったんだが)とき吹っ切れたはずだった。
 そう、だから友達としてなら今でも好きだが、女としてなら『だった』と正確には過去形なのだ。
 でも本当に吹っ切れてたのだろうか? いや、吹っ切れてるはずだ。
 だって昨日アイツに告白された時嬉しさもあったが、今更困ると言う思いの方が強かったんだから。
 困る? 何がってそりゃ今更美嬉にやっぱり付き合えないとか、別れてくれなんていえないし。
 あいつの泣き顔なんか見たくないし……。
 あいつを泣かせたくないって思えるってことは、あいつの事を本当に好きだからってことの
 証拠じゃないか。 そうだよやっぱり俺は美嬉の事好きなんだよ。
 やっぱり今更言われたって夕子とは付き合えないよな。 でもそう言ったらあいつ泣くかな……。
 そんな事考えたら急に胸の辺りが苦しくなる。
 そう言えば昔っからアイツが泣くたびに慰めるのは俺の役目だったっけ。
 でも今回あいつが泣いた場合は流石に俺が慰めるわけにかないしなぁ……。
 泣き顔を見たくないって事に関しちゃ夕子だって同じだよな。
 結局そんな理由だけじゃどうにもならんよな……。

 そんな事考えながら歩いてる俺の背中を強く手が一つ。
「おっはよ〜紅司! な〜に朝っぱらから背中丸めてるのよ!」
 夕子だった。
 誰のせいだよ、と言ってやろうと思ったが止めた。 言ったところで八つ当たりみたいでカッコ悪いし。
「ねぇ、昨日私が言ったことちゃんと考えてくれた?」
 あっけらかんと口を開く夕子。 まるで自分の望んだ答えが返ってくるのを疑いもしないような笑顔。
 其の笑顔が少し癇に障る。 だが強く拒絶できないのも事実だ。 我ながら情け無い。
「昨日言ったことって?」
「だからぁ、藤村さんとは何時別れるの?」
「ちょ、ちょっと待てよ!! 俺、美嬉と別かれるともお前と付き合うとも言ってないぞ?!
 夕子の言葉に俺は思わず叫んだ。
「でも昨日迷ったり口ごもってたりしたじゃない」
「う……」
 思わず言葉に詰まる。 確かに夕子と付き合うとも美嬉と別かれるとも言っていない。
 反面、夕子の事を完全に拒絶したわけでもない。
 そう、俺の心には迷いが生じていた。 折角夕子が俺の事を好きだと言う事が分かったと言うのに、
 それをそのまま断わってしまってもいいのだろうか、と。
「ま、良いわ。 其の様子だと迷ってるみたいだし、迷ってるってこと私にも脈があるってことよね」
 其の言葉に俺は何も言い返せなかった。
 俺の沈黙を肯定の意味として受け取ったのか夕子はにっこりと笑う。
 其の笑顔に思わず顔が熱くなり俺の心は更に揺らぐ。
 心の底で葬り去ったと思っていた夕子に対する恋心が本格的に息を吹き返したとでもいうのか?

「紅司君おはよう」
 その時背後から声がかかった。 美嬉だ。
 その時俺は夕子と一緒にいるところを見られた事に対して言い知れない後ろめたさを感じた。
「ああ、おはよ……」
「藤村さんおはよう!」
 その時俺が挨拶を返すのを遮るように夕子が口を開いた。 一体どういうつもりだ、夕子。
「あ、白波さんもおはよう。 紅司君と仲良いんですね。 やっぱり幼馴染だからかな」
 だが、美嬉は相変らずの朗らかな笑顔で応える。 其の笑顔に俺はほっと胸をなでおろす。
「あ、ああ、まあな。 ところで美嬉にも幼馴染なんているのか?」
「ううん、私には特にそうしたヒトは居ないよ。
 でも従姉のお姉ちゃんにはとっても仲良しの幼馴染の男のヒトがいるの。だから何となく解かるの」
「ねぇねぇ、そのお姉さんと幼馴染の男の人って今どうしてるの?」
 その時夕子が口を挟んできた。
「お姉ちゃんは先日結婚の報告に来ました。 でも相手の人はその幼馴染の人じゃ無くってね。
 あ、でも幼馴染のヒトとは今でも仲良しだって言ってたわ」
 美嬉の応えを聞くと夕子は何かを考え込むそぶりを見せる。
「ふーん。 じゃぁ私は先に行くね」
 そう言うと夕子は一足先に学校へと向かっていった。
 だが俺は夕子の其の何か考えてるかのような表情が気になった。
 アイツ、一体何を考えてるんだ?


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