Why Can't this be Love? 第2回
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 あの日弟から其の話を聞いた時、俺――結城悟は自分の耳を疑った。
「吉田が女と付き合い始めたって? しかも其の相手は白波さんじゃないだって?」
 吉田とは中学のころ部活が一緒で弟の同級生な事もあり、高校になった今でもたまに会って話したり、
 時に相談を持ち掛けられたりもする。

 そう、ほんの数日前にも相談を持ちかけられた。
 相談の内容は恋愛に関すること、白波に告白しようか迷ってると言うものだった。
 正直困惑した。 何故なら俺も白波に惹かれていたから。
 いや、惹かれていたというより羨ましかったのかもしれない。
 中学入学と共に引っ越してきた俺には幼馴染は居ない。
 だから白波と言う幼馴染がいる吉田が羨ましく、また妬ましくもあった。
 だから言った。 あまりことを焦らず慎重にいけと。
 下手に告白なんかして仲がギクシャクするような事になったら後で後悔するぞ、と。
 後になって我ながらみっともないことを言ったと自己嫌悪に陥った。
 ああは言ったがきっと告白は時間の問題だし、告白すればきっと付き合うことになるだろうと。

 だからそんな吉田が白波以外の女の子と付き合いだしたなんて自分でも信じられなかった。
 一体何故? だがそんな疑問以上に強烈な思いが胸に込み上げてくる。
 これって若しかしてチャンスなんじゃねぇか?
 いや、チャンス何て言うほどの物じゃ無いかもしれない。
 確立が0%から1%になっただけかもしれない。 だがその1%すら光明に思えた。
 そして思い立ってすぐさま告白した。 結果はOK。 我ながら信じられなかった。
 ベタだけど何度も自分の頬っぺたや手の甲をつねって夢じゃないかと確認したりもした。 

 そして始まる薔薇色の日々……のはずだった。 
 付き合いだした白波に俺の好きな笑顔は無かった。 吉田といつも屈託無く笑いあってた笑顔。
 俺が何よりも好きで、何よりも羨ましくて、何よりも欲しかった笑顔。
 でも今俺の目の前にあるのはそんな極上の笑顔には程遠い、薄っぺらな作り物の笑顔。 
 もう一度見たかった。 あの太陽みたいにまぶしい笑顔が。 そのために俺に出来る事は……。
 答えは解かりきっていた。 たった一つしかない答え。 でも選びたくない答え。
 だけど、これ以上見てられなかったから。 あんな痛々しい作り物の笑顔は。

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「何やってんだろうな俺」
 胸の前で合わせた両手を離し伏せていた目を開くと俺は自嘲気味に呟いた。
 恋愛ごとで神頼みなんて。 しかもそれが自分の恋じゃなくて、
 たった今別れた女が別の相手と上手く行きますようにだなんて笑い話にもならない。

 そう、俺は意を決して夕子と――白波と別れた。 俺じゃアイツを幸せにしてやれないから。
 俺が白波に伝えた吉田の言葉
 ――いや、実際愚痴ってたぞ。 女と付き合うのがこんなに疲れるものだと思わなかった、って。
 同じ女でもお前と会ってるときは気楽で楽しかったって――
 確かに吉田はそう言った。 だがそれは吉田が藤村と付き合い始めた直後の事
――あいつだって上手く行ってないんじゃ無ぇのか?――
 それも過去の話。 つい先日見た吉田と藤村はとても楽しそうだった。
 そんなことを統合していくと白波が今告白した所で今更どうにもならないかも知れない。
 だけど吉田が藤村と付き合うようになるまで、吉田がどれだけ白波の事を思っていたのかも知ってる。
 だから吉田の心にまだ白波への未練が残っていれば……。
 そして俺はもう一度目を閉じ胸の前で手を合わせた。


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