もし、神様がいるのなら……。 外伝 『星を見てれば』 第13回
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今日は体育館で全校集会がある。
お兄ちゃん達サッカー部の表彰。
いつもわたしは、集会には出ないで保険室にいるんだけど、今日はお兄ちゃんの表彰だから……。

お兄ちゃん達サッカー部が壇上に上がっていく。
ふふふっ、お兄ちゃん珍しく緊張してる。かわいい。

そして、キャプテンと副キャプテンに、それぞれ優勝トロフィーと賞状が手渡された後、
お兄ちゃんが校長先生の前に立つ。
チームの表彰ではなく、お兄ちゃん個人の、すなわち、最優秀選手賞と大会得点王の表彰。
周りがザワつくのが分かる。
きっと、お兄ちゃんの個人賞を発表したのだろう。
全校の視線がお兄ちゃんに集中している。
女生徒の何人かはうっとりとした表情を浮かべながら……。

お兄ちゃんをそんな顔して見ないで!!!!
わたしの胸が急に熱くなる。
分かっている。この感情は嫉妬だ。

分かっている。お兄ちゃんはわたしの恋人ではない。

分かっている。お兄ちゃんはわたしを妹としてしか見ていない。

だけど、だけど!!
やっぱりそんな顔してお兄ちゃんを見てほしくない。
だって、だってわたしは、お兄ちゃんの事が大好きだから……。

わたしの目からは、なぜか大粒の涙があふれていた。

 

全校集会が終わり、その日の日程を全て消化した後、わたしはお兄ちゃんと一緒に帰る。
お兄ちゃんは、わたしのために朝練は全て休み、放課後の練習は月、水、金曜日だけ参加している。
そして今日は火曜日。

帰りの電車の中、お兄ちゃんはやけにニヤニヤしていた。
どこでかぎつけたか、わたしが全校集会で泣いた事を知っているらしい。

あの時……。
わたしは恐ろしい事を想像をしてしまった。
すなわち、お兄ちゃんがわたし以外の女の子と恋人になっているところ……。

悲しかった。お父さんが死んだ時よりも。

寂しかった。子供のころ一人でお留守番してた時よりも。

そして、悔しかった。隣にいるのがわたしではないことが……。

……まずい、また泣きそう。

わたしは下を向いて、必死に泣くのを我慢する。

ふと、頭の上にあたたかい感触。
……お兄ちゃんの手だ。

お兄ちゃんは、子供の時からわたしが泣きそうになると、わたしの頭をなでてくれた。

わたしは吸い込まれるようにお兄ちゃんの胸に飛込む。
すぐに胸いっぱいにお兄ちゃんの匂いが広がり、気持ちが落ち着いてきた。
少し冷静になり、お兄ちゃんを見上げる。
お兄ちゃんは困った顔をしていた。

ここは電車の中だもん。困るよね?
でも、やめてあげないよ。
わたしを泣かせたのはお兄ちゃんなんだから。

ところで、こうやって抱きついていると、わたし達は恋人同士に見えるのかな?
わたしはふと考える。

恋人同士、か。
いっそこの場で、わたしの気持ちを告白しようか。
……いや、無理だ。
わたしにそんな勇気はない。
そして何より、今の状態をくずしたくなかったから。
結局、わたしはわたし達の駅につくまで、お兄ちゃんに抱きついていた。

 

 

 

それにしても、想像しただけでこんな気持ちになっちゃうなんて……。
もし、本当にお兄ちゃんに恋人が出来たら……………わたしはどうなっちゃうんだろう?


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