広き檻の中で 番外編 『この子どこの子?』 番外編7話
[bottom]

「晋也……どこにいるの?」
周りを見回しても、闇しか見えない。自分の発した声も聞こえたかも定かではない。
「晋也ぁ……でてきてー……くらいよー……」
自分でも驚いた。こんな弱気な言葉に。そういえば、学校にいる時以外はずっと晋也と一緒にいる。
買い物もお風呂もベットも。常に視界には晋也がいる。
………学校も一緒がいいと転校手続きも進めたが、それは流石に晋也に止められてしまった。
でもそれだけ心配だということだ。
だって、春華は一度やることをやったせいか、治まることなく虎視眈々と晋也を狙っている。
それだけじゃない。
私と晋也が付き合っている……どころか同棲しているのが友達にばれたせいで、
私の学校で晋也のファンクラブまでできてしまったのだ。
確かに晋也の顔は良い……顔は………性格は別として。
って、私はその性格を好きになったんだっけ………
当然そのファンクラブは発覚した当日に潰しておいた。
私がいるというのに、本当にいい度胸をしてる。
「晋也ーー!でてきてよ!いるんでしょ!?私はここだよー!!」

また暗闇の中で叫ぶ。と、
カッ
一瞬で周りが明るくなった。あまりの眩しさに、目を開けられない。この明るさは…太陽だ。
「えっ?ええ?」
そこは思い出深い場所だった。晋也のかよう学校の正門。私と晋也が出会って、告白した場所だ。
「あ、れ?」
なんでだろう。体が動かない。ペタンと座ったまま立ち上がれない
まるで体が動かし方を忘れてしまったように。
すると……
学校の校門から、一人の男子が出て来た。それは……
「し、晋也!」
私が待ちに待っていた、愛しき人だった。が……
「ふふふふん♪ふふふふん♪ふふふっふふふーん♪」
晋也は鼻歌を歌っているきりで、全く私に気付かない。
気付くどころか、視界にも入っていないみたいだ。
「ちょっ、晋也!?助けてよっ!私…動けないよぉ……」
なんども懇願しても、晋也はまるで何事も無いかのように歩いている。
そしてそのまま、校門の壁に寄り掛かる。誰かを待っているのだろうか?何度も時計を見ている。
そしてしばらくすると………
「お待たせ、晋也。」
晋也の名前を呼ぶ……私以外の女がやってきた……

「いんや、俺も今きたとこ。……それじゃ、行くべ。お嬢。」
晋也がその女の名前(?)を呼び、手をとる……その二人は、まるでお姫様と王子様みたいに
似合ってて……似合ってて?私以外の女と晋也が?
そんな…いやよ…そんなのって……
「そういえば……」
お嬢と呼ばれた女が今度は馴々しく腕を組みながら聞く。こんな状況で考えたくも無いが、
確かに彼女は綺麗だ。いや、綺麗すぎるわね……
『お嬢』という呼ばれ方がそっきりそのまま合う、そんな女……
「前のあの娘と、もう別れたの?」
「ああ……志穂か?」
『えっ?』
その言葉に驚きを隠せなかった。不穏な単語……前の娘……別れた……志穂………
つまり、晋也はもう私を捨てて、次の女と……
「んー。もう合鍵も返してもらったし、携帯も変えたしな……向こうからは、
なんの音沙汰なしだから、大丈夫だヨ。」
晋也が……私を…捨てた……
「なんであの娘と別れたの?」
「いや、さ。……あいつ、我が儘過ぎるんだよなぁ……俺の秘蔵コレクション捨てちゃうし。」
それは……晋也に私だけをみて欲しいから!
「いっつも怒り口調で、すぐ殴るしさ。」
それは晋也にかまってほしいから。私の事を常に考えててもらいたいから。
「結局はさ、恋人関係っつーより……子守してるみたいだったんだよ。」
その言葉を聞いた途端、心がバラバラに引き裂かれるような気がした。
子守……晋也にとって、私は我が儘な子供にしか見えない……そんな…
「だめっ!晋也ぁ!いっちゃだめぇっ!!戻ってきて!」
二人が腕を組んだまま歩いて行く。相変わらず私の体は動かない。
「ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい!ごめんなさい!!もう我が儘言わないから、
なんでも晋也の言う事聞くから!!殴ったりもしない、どんなHなこともしてあげるよ………
だから捨てちゃいや!!行かないでぇ…私のこと……みすてないでよぉ…」
ダメ、ダメ、だめっ、駄目!!駄目ぇっ!!!
なんでもする、なんでもあげる……でも、晋也だけはもってっちゃいや!!その人が……私の人生そのものなの……だからっ…
「お嬢…」
「晋也…」
私の声もとどかず、二人はついに……聞きたくない言葉を…
「「愛してるよ。」」

「晋也ぁっ!イヤァァァッ……」
ガバッ!
「はぁはぁ……晋也……あ、あれ……」
ふと気付くと、また真っ暗な世界だった。でもここは……知ってる場所。
晋也の部屋のベットの上……隣りには……そうだ、ナミちゃん。
晋也は……いた。床で雑魚寝してる…そうだ、私とナミちゃんにベット譲ったから……
ていうことはさっきのは……
「夢かぁ……」
はぁーーっと大きな溜め息をつく。今度こそ全身の力が抜けてしまい、動けなくなる。
ペタンとベットに蹲ってしまう。
「つべたい……」
気付けばタオルケットが濡れてビショビショだった。原因は……
「私……ないてる…」
顔にはまだ乾き切って無い涙が流れていた。あの夢のせいだ。今でもまだはっきりと覚えている。
私が…ただの我が儘……
床で寝ている晋也に近付く。
「んー……でひゃひゃ……」
涎を垂らしながら、いやらしい笑い声を出している。夢でも見ているのだろうか……
その夢にいるのは私?……それとも……
「いや……そんなの…絶対に……」
ゆっくりと晋也に寄り添うように隣りで横になる。
「晋也……晋也……」
何度も名前を呼び、その存在を確かめる。
「ん……」
晋也の手を取る。普段は気にしていないが、こうやってよくみてみると男らしくない、
スラッとした綺麗な指だ。まるで女みたいに……
それでも大きくて、暖かくって。私を安心させてくれる。
「晋也……すきぃ……」
何回か手を頬ずったあと、その晋也の手を………私の秘部へと持っていく……
「んんっ…あん…」
やっぱり自分のとは全然違う。晋也の、というだけで溢れる蜜は止まらない。
指を使って気持ち良くなるようにかき回す。
「んぅ……あぁ……ふぁ…くぅん……」
ヌチャヌチャヌチャ……
いやらしい、粘っこい音が部屋に響く。夜だからか、やたらと大きく聞こえる。そ
うだ……ナミちゃんがいたんだ……それでも興奮してるなんて、私変態かも……
「ああん……あっ…くぅ…ふぅ……」
快感を貪るうちに、不安になる。……晋也は変態な私なんか嫌いだろうか……
その事が脳裏をよぎり、動きを止めてしまう。
(晋也に嫌われたくない……晋也の望むままの私でいたい……)
そう悩んでいると……
「おやおや?もういいのかなぁ?」
突然の声に、心臓が止まるかと思った


[top] [Back][list][Next: 広き檻の中で 番外編 『この子どこの子?』 番外編8話]

広き檻の中で 番外編 『この子どこの子?』 番外編7話 inserted by FC2 system