広き檻の中で mixture world mixture worldU16
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「ほらほら!志穂!キノコキノコ!みろよー、エロいよなー。形がまるで……ぶっ!」
試合時間十秒足らず。神速の右で静められる。スーパーの野菜売り場になだれ込むように倒れる俺。
放置する志穂。イヤン、きっちくー!
「ヒソヒソ…また来ましたよ、あの二人…」
「ヒソヒソ…まったく、来る度に商品棚を押し倒していくのはやめてほしい……」
店員と店長のヒソヒソ声を目覚ましのようにしてカボチャ達に囲まれて意識を覚醒させる。
ははっ、まいったなぁ、みんなの注目浴びてるよ、俺。
「見られると、体が熱くなっ……てててて!!!!耳ひっぱんな、志穂!」
つい先週買ったエロゲーの名台詞(?)を決めようとしたら、志穂に阻止された。
余談だが、恋人がいてもエロゲやエロ本を欲するのは男のDNAに刻まれているのだろうか。
買っても三日足らずで志穂のスキャンに引っ掛かってしまい、塵と化してしまう。
まぁ、本屋のおっちゃんに顔馴染みで安くしてもらってんだけどねー。
会計を済ましている間でも、しっかり手を繋いでいる志穂は正直Cawaii!と思う。
人がいなければ力の限り抱き締めんばかりだ。

ピッ……ピッ……
ふと気付くと、レジを打っている店員さんがバリバリの顔黒(死語)だ。今時珍しい。
学生……だとしたら俺達と同い年だろうか。
レッドアニマルかと思っていたが、珍しや。しかもピアスまで。
そんな店員さんの目線が、ふと俺達の手元………つまり繋いでいるところにいく。
その瞬間…
(チッ……真夏にベタベタしてんじゃねーよ、暑苦しい。)
とでもいいたそうな顔になった。ふふん、この晋也、人の顔色を伺うのは天下一。
………なんせ隣りには我が儘ちゃんがいるからネ。大変な訳さ。
そんな事を考えながらレジ打ちを見ていると…………
ギュウーーーーッ!!ゴキッ!
「ahch!」
嫌な音とともに、手首の関節が外れていた。
「ま、曲がってるよ!し、志穂ぉ?!なにやって………」
「ふん!はい、二千円!お釣はいりません!!」
顔黒に二千円を払ってから、本当にお釣をもらわないまま行ってしまった。
レジの子もポカーンとした顔のままであった。
「お、おい!志穂!?なんなんだ?なに怒ってんだ?」
志穂を追いかけようとして……
「あ、お釣はもらうヨ。」

スーパーを出ると、すでに志穂は一人で歩いていってしまった。そのオーラ、魔王がごとし。
おお!人波が勝手に分かれて道が出来ておりまする!
「ってモーゼじゃあるまいし。」
その波が戻る前に、志穂の後ろを追っかける。
「おーい、志っ穂ちゃん!なーに怒ってんだヨ?」
「知らない!」
「し、知らないって……」
「晋也なんて、スーパーで働いて一生でれでれしてればいいのよ!
さっきの店員さんと仲良くしてれば?」
はぁーん。そういうことか。まったく、別にでれでれしてたわけじゃない。
物珍しくて見てただけだっつーの(失礼ナリ)
「違う、違う。あんな顔黒はお断りさ。」
「じゃあどうしてじーっと見てたのよ………」
「いや、ほら。だって顔黒だよ?今時だよ?あの子も、その子も、あっちの子も。
みんな普通じゃないか。」
そう言いながら適当な女の子を指差す。
「最後はオバサン………」
「ば、馬鹿もん!オバサンだって立派なレディだ!」
まぁ、典型的なチリチリパーマだったわけだが………
「と、とにかく!オイラは顔黒になんかキョーミ無いの!」

「本当……?」
「ほ、ホントだ。俺はお前のように白雪が如く肌が好きなんだ……」
「肌、が?」
「いや、お、おまえが………」
そんなうれしはずかしなことを人々が行き交う通りのど真ん中でしていると……天罰は下るものだ。
「せぇ〜〜〜ん〜〜〜〜〜ぱぁ〜〜〜い!!!」
フッ
暗転?……否、顔が地面にめり込んでいたのだ。後頭部に響く痛み、
「晋也?晋也!?」と志穂が心配してくれる声。嗚呼、あいされてますなぁ……
ムクリ
「さて、春華よ。突然のドロップキック、どのように説明いたす?」
「はい、私が休日を優雅に過ごそうと思ったら、向こうからクリームが如く甘い空気が
流れて来るではないですか。と、走って来て見たらうれしはずかしやってて腹だったので、
ランニングキックを決めてみました。」
「あははは、そうかぁ!」
「おほほほ、そうです!」
「うふふふ……そぅ…」
ああ、まずい…志穂の機嫌がまた……くっ、こいつこうやって春華とふざけ合ってるだけで
妬くからなぁ………3Pまでしましたが何か?
「悪い、いま志穂の機嫌がわるいんだ。」

こそこそと春華に耳打ちする。
「た、確かに、目が虚ろですね。」
「ふふふ……お二人ともなかがいいのね……耳打ちするぐらいなんて……
私も眼中に無いっていうの……そう…」
と、ごそごそとスーパーの袋を漁ると……
キラーン!
「この切れ味……急に試したくなったなぁ……」
「ば!おま、そこで『万能包丁』取り出すなよ!」
「せんぱい、万能っていうぐらいだから、人間もスッパリ逝きますよ、多分。」
そこでいつもみたいに乗ってくる春華よ、お前が大物になるのは俺が保証しよう。
そんなやり取りを大通りで(迷惑)していると、またもや向こうから……
今度は幼稚園児ぐらいの幼女がやってくる。
ま、まさかあんな子までにフラグ立てなんて鬼畜なことはしてないよ。
が、神はいるのだとしたら、そいつこそ鬼畜というもんだろう。幼女は俺の顔を見るやいなや………
「パパッ!」
ギュウ!
乱闘のゴングは今まさに鳴らされた………
「「(晋也)(せんぱい)!!どういうこと(よ)(ですか)!!!!??」」


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