広き檻の中で mixture world mixture worldU11
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「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ。」
別に興奮してる訳じゃない。こうでもしないと生きるのを保つのさえつらい。
だんだんと命が削られていくのがわかる。
もう志穂が帰ってくる時間だろうか。朝か夜かもわからないこの部屋だが、
それぐらいの時間がたったことはわかる。
……まずい、帰って来ちゃいけない。帰って来たらお前は………
「ち、ちくせう………」
〜〜♪〜♪〜♪♪〜〜♪
と、急に携帯が鳴る。ポケットから取り出し、何とか開く。発信元は……
「なんだよ、こんな時に……」
ピッ
「…はい、晋也だ。」
声は普通に出せるのが救いかもしれない。
「ああ、晋也か。今、大丈夫か?」
「…ぎりぎり大丈夫だ。」
「そうか……じゃあ、用件だけ話す。重要だからしっかり聞けよ。」
「ああ。」
「お前に懐いてる夏校アイドルがいるだろ?アイツがな……」






「ま、まじか!やっぱり……」
「やっぱり、という事は心当たりがあるのか。」
「目茶苦茶ある。」
「ふむ、なら助けてやれよ。お前の彼女なんだろ?」
「そ、それがな、極めて困難な状況なんだ。」

「困難?」
「ああ、今身動きが取れないんだ。……というか、自分も何処に居るかわからない。
…つまり、閉じ込められてる。」
「拉致監禁だな。………せ、性転換手術は受けたのか!?」
またら興奮した声で聞いてくる。多分、電話の向こうじゃ目がきらきらしてんだろうなぁ。
「はぁ?なんでそうなるんだよ。」
「い、いや、お前の状況が今やってるゲームと似ていたからなんとなく。」
どんなゲームだよ……こいつの将来が心配になってきた。
「まあ、そういうわけで助けに行こうにも不可能な状況にあるんだ。」
「ふーむ……それは残念だ。まぁ、三次元に興味の無い僕にとっては、関係のない話だけどね……」
…やむをえん。この交渉は避けたがったが…
「…ギャルゲー一本……」
「……否、エロゲー、だ。しかも店で購入。ネットなど軟弱なことはするな。」
「くっ!まあいい!背に腹は変えられない。」
「ちなみに抜きゲーな。シナリオ重視じゃなくって。」
こ、こいつ。調子に乗ってたくさん注文しやがって。
結局こいつの有益なまま交渉は終了した。

同日、夜。
晋也に呼ばれて学校にやってきた。メールで来たが、同時にアドレス変更もかねてだった。
なんか女みたいなアドレスでちょっとわらえた。
八時に来るように言われたが、待ち切れずに三十分も早く来てしまった。もう晋也も来てるかしら。
修学旅行はそれなりに楽しかったが、やっぱり晋也がいないと世界が色を失ったように面白くなくなる。
修学旅行最後の夜は泣きそうになった。
声だけじゃ足らない。顔を、温もりを、匂いを……晋也のその全てが、私に必要だ。
待ち合わせ場所の体育用具室の前まで来る。こんな所に呼ぶなんて……きっと邪な考えでもあるに
ちがいない。でも、今なら晋也のすることに全てイエスと答えられるに違いない。…それだけ欲求不満だ。
「晋也?いるの?」
中に入り、呼び掛けると……
ガンッ
乱暴にドアが閉められる。
「ちょっ、ちょっとなんなのよ?」
開けようとしてもびくともしない。外から何かでおさえてあるみたいだ。
「はは……本当にきたよ。」
「こいつか?晋也の女って。」
「うっわぁ、俺、モロ好み。」
「ぼ、僕。実はロリコンだったんだ。」
突然、用具の影から半裸状態の男達が出て来る。見たこともない男達だ。
みんな好き勝手をいいながら、よって来る。その目はギラギラしており、興奮を押さえられないほど
息が荒かった。
「い、いや………」
何をされるか、一目でわかった………
「イヤァァァァァ!!!!!」
叫んでも、誰にも聞こえない。







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