広き檻の中で mixture world mixture worldU4
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「うーん……」
結局午後の授業も保健室でおサボり。今日の授業はまともに出てないや。……まあ、いい。
何ごとも経験さ!
教室へ鞄をとりに戻る。授業を受けられなかった分、家で神速並に勉強しなければならない。
学年の脳を司る俺にとっては大変なことだ。
今日へ近付くと………
「きゃ!ちょっと誰よ〜。こいつロッカーの中に閉じ込めたの。」
「あー、めんどくさいからまた入れ直しとけ。」
あ、忘れてた。いやぁ、あいつも律義に最後まで入ってるたぁ、馬鹿だねぇ。
まあいいや、俺が行っても面倒になるから帰ろう。さらば、鞄。さらば、教科書。
下駄箱に行くと、そこには驚愕せし光景が……
「しんやぁー!」
「おどっ!!」
志穂が居た。早いなぁ。春校から結構距離あるんだけど。愛の力って奴?
ニヤニヤしながら近付く。愛しい奴め。
「な、なにニヤニヤしてんのよ……」
「いや、俺って幸せもんだなぁって思ってね。」
だが、そのとき周囲の目に気付くべきだった。
(ヒソヒソ……おい、晋也の奴、今度は春校の子だぜ?)
(今日のお昼に春華ちゃんといたよな?たらしってやつ?)
いかん、また変な噂が立ってきた。
「いくぞ、志穂」
「わわ!」

 

半強制的に志穂を引っ張って行く。負けませんよ、ええ、負けません。
しばらく歩いて、人の少ないとこまで来る。うん、ここなら大丈夫だろう。
「ふう、いきなりひっぱって……驚いたわよ。」
「ああ、ちょいと俺の地位が危うくなったからな。」
一段落したと思ったらまた一難。今度は志穂が目の前に立ち塞がった。その(ない)胸を堂々と張り、
手を腰に当ててとうせんぼをしている………つもりらしい。
まあ、威圧感なんてのは全く無いが。
「で?今日のお昼は……どういうことだったの?」
「あー……」
よく覚えていらっしゃることで。誠心誠意を込めて説明をする。
「ほ、ほら。お前の弁当箱!からっぽだろ?まあ、確かに春華が隣りに居たがそれは偶然であり、
食堂の受付の人をおばちゃんって呼ぶと光にされちゃうんだ。」
「ふ〜ん……」
ええぃ!こうなりゃ強行突破だ。周りを見回す。うん、誰もおらんな。
「まったく、あの烏。いいかげんにどっか……んん!」
不意打ちでキス。かなりディープなやつ。うーん、俺ってやり手だなぁ。
「ぷはぁっ……ちょ、ちょっと!」
「まあまあ、これで許してくれよ。」
「……もう。」

 

なんとか退けたようだ。
「………ねえ、晋也…」
志穂がしおらしく話しかけてくる。これはめずらしいテンションですね。
「なんだい?悩みならお兄さんに言ってみなさい。」
「うん……実は、明日から修学旅行なんだ。」
「なんですと!?」
「それで……明日から三日間いないから、その………今日泊まってってもいい?」
なぁーる。そういう事か。
「……えっち。」
「な!そ、そんなんじゃないわよ!ただ、私が居なくなって、寂しくなるかなぁ〜って思ったから、
泊まってやるっていったのよ!」
「っ!」
ギュッ
不意に、志穂を抱き締めた。なんか……なんか悲しかった。
「居なくなるなんて、言うなよ。……ほんとに寂しくなるジャンかよ。」
「晋也……」
いかん、テンションダウンだ。上げないと。
「いやはや、むらむらしちゃいましたよ。早く子作りしますか。」
「ストレートすぎよ、馬鹿。」
トマトみたいに赤くなっちゃって、かわいい奴め。あまりにもかわいくて、もういちど
キスしようとすると………
「あぶなーい!!」
「ごふぅ!」
もろに脇腹に衝撃を食らう。あまりの強さに吹っ飛び倒れ込んでしまう。い、いてぇ。
「危ないところでしたね、せんぱい!この女、まさか催眠術まで習得しているとは。」
「ぐぅ…さすが我が直属の後輩。何のためらいも無くソバットをぶちかますとは。
……しかもスカートで。」
「あ・ん・たねぇ!!」
突然の登場+キスの中断により、志穂の怒りボルテージマックス!!!速攻でナイフを抜刀(!?)。
「どうしていっつも邪魔ばかりすんのよ!!」
「なにをいってるですか!!邪魔なのは貴女ですよ!ロリチビ!」
ギャーギャーワーワーさわぐふたり。
……どっちか一人でもいいからおれのこと心配してほしかったなぁ。


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