広き檻の中で mixture world mixture worldU3
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早速箸を付けようとした矢先………
「あ、そうそう、晋也くん!これ、あなたにお届け物ですよぉ。」
おねいさんが出て来て、包みを渡された。……どう見ても弁当だ。
「春校の女の子が晋也くんにって、わざわざ渡しに来たのよぉ。この炎天下の中、走って来たのねぇ。」
春校?……ってこたぁ…
そう考えていると、携帯の着メロが鳴る。面倒だから初期設定のままにしてたら、春華に親父臭いと
言われた……クスン。
ピッ
「俺だ。」
「……知らない人が出たら驚くわよ。」
「おお、志穂か。これ、お前のか?」
「あ、届いた?今日作ったんだけど渡すヒマ無かったから、三時間目サボってもってっちゃった。」
泣かせてくれるねぇ。おじさん、感動だよ。
が!ここで初めて気付く。……その………周囲のキツい視線を。まぁ、そのなかでも特にキッついのが……
「……せんぱい。」
春華だ。目の前に二つ弁当箱が並び、かなり不機嫌な感じだ。さらに追撃。
「あ、あと他に何か生ゴミなんて貰っても食べちゃダメよ?そんなの食べるのは烏ぐらいなんだから。」
あわわわわわ。あんたにはみえているんですか?
それが聞こえてたのか、春華も反撃に入る。

「せんぱい、せんぱい。やっぱり青空の元、屋上で二人っきりで食べる『私の』お弁当はおいしいですね!
あ、そんな産業廃棄物、捨てちゃいましょう。わざわざせんぱいの胃の中に不法投棄する必要は
ありませんよ!」
あわわわわわ。あんたもそんな大声で叫ばんでも。ってかここは食堂ですよ!
「ちょっと!晋也!!屋上ってなによ!?……うわーーーーん!この浮気者ぉ!」
そらみなさい!勘違いして涙声になっちゃったじゃないか。
「いやいや、志穂!早合点だ!ここは食堂!ほかの奴等もいるんだって!ねぇ!おねいさん!?」
「おねいさん!?ちょっと!!あの烏以外にも女がいるってゆーの?……もういや!
あんたを殺して私も死ぬぅ!!」
い、いかん。火に油を注いでしまった。どうしよう。対処に困り、おろおろしていると、春華が
携帯をひったくる。
「あー!せんぱい!!電池が切れちゃいますよ!!これ以上の会話は無理ですねぇ、残念!」
そう言って、勝手に電話を切る。
「ふう、本当にしつこいですねぇ。これだから子供は……」
どっちが?というのは、心の声。まあいいや、食おう。

「気をつけて下さい、せんぱい。きっとあの強欲痴女のことだから食べたら金を要求されますよ。」
「いや、これ俺んちの食材……」
「きっと労働費とか言ってきますよ。うん、違いない。それに比べて、私のはオールフリーです。
いや、完全にタダってのもなんですから……
うん、そうですね。お代はラヴで結構。」
「馬鹿を言いなさい。どこぞの花人みたいなこと言ってるんじゃないです。米粒を残すと目が潰れると
昔から教えられました。
まだまだ世界をこの目で見たい私にとっちゃ、それは難儀ナリ。つーこって、両方食べます。」
二つとも開いて、ガツガツと腹に詰め込んでいく。
「うぁー…私の愛妻弁当が汚されていくぅ……」
なんか春華がぼやいてたけど、とりあえず無視。ちなみに味は同じぐらいだったよ。






「う、おぇっ」
まずいから吐きたいんじゃない……食い過ぎだ。
「だかは私のだけでやめとけば良かったんですよ。自業自得です、せんぱい。」
「う、うぅ。ご、午後はサボる。……保健室で寝てる。」「……もっと自分を大切にしてくださいね、
せんぱい……」
「…サンクス。」
ひらひらと手を振り、春華と別れる。あぁ、おねいさんの名字が高橋だ。苦しみによって
どうでもいい事思い出したヨ………


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