「おおおおぁぁぁぁばやたわまらがわ(←言葉にならない叫び)」
なんなんだ、このダルさ。昼寝したら更に増してしまったではないか。
こんな日は学校に来るべきじゃねぇ。かえんべ。
……春華が来るとかいってたけど……まぁいいや。考える気力も沸かん。トボトボと教室の前を通って帰る。
帰路がやたらと長く感じる。日差しも暑くなってきた。いかん、完全に逝っちゃってるな。俺の体。
まぢ、死にそう。
……志穂への想いが薄れてるだって?勘弁。それはない……はずだ。それとも、
修学旅行で離れてるからか?
「人肌恋しいとはこのこと、がはっ!!」
背中に強打。ライナー級のボールが直撃したぐらい痛い。ましてやこんな弱ったとこに食らったとなれば
大打撃だ。
ふらつき、倒れる。助けを呼ぼうにも、周りには誰もいない。……まぢ、ピンチ。
「くっ、この笹原晋也。腐っても武士の端くれ!これ以上背中に傷を負ってたまるか!」
必死に振り向く。俺を襲撃した人物、それは……
「ふふふ……だめじゃないですか、晋也さん。一人で帰ったら。私が看病してあげるって、いいましたよね?」
バットを手にした春華だった。
「ぐぁっ、つつ……看病する人間を殴り付けてどうすんだよ………」
「嘘だ……晋也さん、私に看病してもらいたくないんでしょう?一人で帰って鍵締めて、
居留守使うつもりだったんでしょ!?私を追い払うつもりだったんでしょ!?」
いや、この状態の春華には看病してほしくないわけで。なにもそこまでするつもりはないんだけど。
「だめ、絶対だめ……私が看病するの……精一杯……ずっと看護してあげるの……」
再度バットが振り上げられる。その一撃の痛みを感じた瞬間、意識は闇に消えた………
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デジャブとは違うかもしれないが、似た光景だ。違うのは、壁が真っ暗な事、体が縛られていない事。
………とはいえ、そうとう弱っているのか、自力で立つのも困難のようだ。まだ頭がクラクラする。
「酷……だなぁ。」
このまま体力回復をはかるのは無理となるとやばい。『想いが薄れてる』せいだ。
「我慢ですよ、晋也。」
自分に言い聞かす。もうすぐ志穂が帰ってくる。そうすりゃ嫌でも助かるだろう。
………助かる?………志穂に助けてもらう資格なんてあるのか?
「だぁぁぁ!やめやめ、今はんなこと考える状況じゃねぇよ!」
と、静かに部屋のドアが開き、微かに光がはいる。だが、それだけでは自分が何処にいるのか
理解するのには難しい。
「晋也さん……具合はいかかですか?」
春華だった。普段着に着替え、何食わぬ顔で聞いてきた。
「んー……最悪、だな。」
「あは、それはいけませんねぇ。やっぱりしっかり看護しないと………」
そう言うと、ゆっくりと近付き、服を脱がされる。
「って待て!お前までなぜ服を脱ぐ!?」
「ふふふ…体を温めるには、裸で抱き合った方が効率いいんですよ?それ以上の事をすれば……もっと、
暖まりますよ?」
夏に何を言う。こちとら汗だくだくなんだよ。冷や汗も混ざってるが。
「ほら、抵抗しないで。私がいっぱい愛して、奉仕してあげますから……気持ちいいですよ?」
そのワードにはそそられるものがある。しかしっ。
「だが断る!!そう言う事は志穂にだけしてもらうと決めてあるんでね。貞操は守らんといけんのですよ。」
決まった……言ってやったぜ。それを聞いた春華は………ん?なんか体が小刻みに震えて……
「志穂、志穂、志穂って、そればっかり!なにがいいんですか、あの女の!?
胸も小さい、態度はでかい、すぐに暴力振るう!
女の私から見ても最悪じゃないですか!?好きになる要素なんて一つも無い。私なら…私なら、晋也さんを大事に出来ますよ。優しくしてあげられます!!!」
「……違う、違う、違うんだよ!!それは万人が求める理想の性格かもしれん。
でもな、俺は変わり者だからああいうやつが良いんだよ。
言うだろ?蓼食う虫も好き好きって。それにな、あいつとは前世からの付き合いな訳よ。」
「……わからない……全然わかんない!……ふふふ、だったら……汚してやる……あの女を、
晋也さんがもうにどと見たくなくなるぐらい、汚してやる!!」
そう叫ぶと、一人部屋を出て行く。……汚す…汚す……って、それはまずい!!なんとか止めないと!
「動けよぉ!志穂のために動きたいっつってんだよぉ!!!」
無情かな。体は治らなかった。