広き檻の中で mixture world mixture worldU
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轟く蝉の泣き声。一般的なミンミンゼミだ。蝉というのは長い間地面にいて、
成虫になると地上に出て来る。だが、地上では一週間程度しか生きられないと聞く。
なんと悲しい事カナ。出てきて鳴いて交尾して。それが蝉の一生なのだよ、諸君!!!
………さすがに蝉について考えての現実逃避は厳しくなってきたな。
「ではでは志穂せんぱい。そろそろ春校へ向かったらよろしいのではないでしょうか?
正反対な訳ですからねー。遅刻しちゃいますよ?
まさか名門春校の一生徒がそんな失態をしでかす訳にはいきませんよねぇ。」
「あら、十分に間に合うわよ。そのことを考えて早く家を出たんですから。あなたこそ、
一人でアパートをでて一人で登校すれば?って提案したじゃない。」
双椀に取り付く二人の少女。ぎりぎりと会話が進む度に腕が締め付けられていく。
んー、もっとこう胸があればこう、クル、ものがあるんだけどなぁ………洗濯板に期待するのは酷か。
が、何度も言うが、嫌いではない!!
「ほらほら、せんぱい、校門ですよ。ささ、早く行きましょう。」
「お、おい。」
グイグイと腕を引っ張っていく春華。それにつられ、俺、志穂と続いていく。

「さあ、校門に入りました。……あっれ〜?おかしいですねぇ、夏校の敷地内に春校の生徒が
混じってますねぇ。こりゃ侵入者だ。きゃ〜、先生〜!痴女が現れましたぁ。」
さすが我が後輩。口が早い。朝早いとは言え、少しは生徒がおり、春華の声に振り向く。
「くっ…このガキ…」
「ま、まぁまぁ、志穂さんや。怒りなさんな。」
「あんたはどっちの味方なのよ!!」
「うっ…」
卑怯だなあ、その質問。
「まあいいわ、晋也。ちょっとかがみなさい。」
「ん?」
言われるように、目線が合うぐらいまでかがむ。俺の身長が180。志穂が143なため、結構差がある。
次の瞬間、志穂が近付いてキスをした。軽いキスだ。
「!!ばっ!!お前……」
「じゃあ続きは放課後ね。ばいばい晋也。……ついでに『後輩』さん。」
言いたいことだけ言って、スカートを翻しはしりさってしまった。残ったのは凍結した校門という空間。
……前と違い、志穂の方からやられるのはかなり恥ずかしい。て、テヘリ。
ここでいち早く再起動したのは春華だった。
「せ、せんぱい!ほら、私にも、キス、キスです。ファーストキスが衆人観衆プレイってのも
ナンですが、いい思ひ出に……」

 

「な、なにをおっしゃる兎さん!ちゃっちゃと教室に行くですます。」
噛みまくりながら、皆の視線というLASERをかいくぐるように早足で歩く。春華はまだ腕に近付きながら
顔を寄せて来る。
「な、なんでですかー!あのちび痴女とはキスしといて、私にはしてくれないんですか!?
USAじゃ挨拶代わりですよ?おはようの意味ですよ?」
「こ、ここは日本です!トイレだろうがキスだろうが、なんでも洋式にすりゃいいって
もんじゃないですぜ?」
和式トイレを使えない俺が言えるもんじゃないが。
「せんぱいだってこの前キスしたじゃないですか!しかも初対面で脈絡もなくですよ?
一歩間違えればレイプ。強姦ではなく口姦ですよ?」
「ですよ、ですよってお前はしつこいセールスマンか?それにあれは強姦じゃない、
れっきとした和姦だ。それに俺と志穂は恋人……」
「あー!あー!」
俺の言葉を書き消すように叫ぶ。もうさっきからのやり取りで注目されまくりだヨ!
「みなさん、すみません!いませんぱいの声帯が故障いたしました。『志穂』といって
『春華』という意味です。つまり私とせんぱいは恋人……」
ビシッ
「あう!」
デコチョップ一発。
これ以上面倒なことになら内容、沈黙した春華を一年教室に連行する。
……はあ、一週間分の体力と気力を使った気がする。
その分は午前授業を睡眠ということで補えますな。


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