広き檻の中で mixture world mixture world 4
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朝食、昼食と、志穂は食堂に来なかった。一応作ってはおいたが、全て捨てる事になった。
「う〜ん。志穂ちゃんどうしたんですょうねぇ?」
「さ、さぁ……」
片付けの途中、里緒さんに聞かれるが、答え方が見つからない。
「せ、生理とかじゃないっすか?はは、アッハハ!」
「晋也さーん。真面目に考えてください。」
「うぅ…はい。」
一応可能性のうちの一つだったんだけどなぁ。ま、原因は大体分かってるけど……。
「晋也!終わった?」
そんな事を話していると、お嬢が台所に顔を出す。……せっかちだなぁ。
「あらあら、お嬢様、こんな所に顔を出すなんて珍しいですねぇ。」
「う、うん……その、ちょっとね。」
「終わったよ、お嬢。」
全て終わらせ、エプロンで手を拭きながら近付く。だが、終わったと聞くやいなや、がしっと腕を掴み、
引っ張ってくる。
「じ、じゃあ、早く行こう、ね?」
「ちょ、エプロンぐらい脱がしてくれ。洗わないと……」
「どうせ汚れるんだからいいじゃない。」
……お嬢、発言が親父臭いぞ。そんなやり取りを、里緒さんはほほ笑ましそうに見ている。
「あらら〜。まるで仲の良い親子みたいですねぇ。」
「ぐっ…親子…」
あ、ダメージ受けてる。まぁ、兄妹ならまだしも親子だもんなぁ。
「ふふふ…晋也さんも、大変ですねぇ、いろいろと。」
「ええ、大変です。いろいろと。」
「どっちにしても、後悔の無い様にしてくださいねぇ。」
うーん。里緒さんにはかなわないなぁ。
「む、晋也!里緒と話してないで、早く行くぞ!」
我慢しきれなかったのか、更に力を込めて引っ張られる。
「はいはい、行きますよ。」
あらら、ほんとに親子みたいだ。
台所を出て、玄関ホールへ向かう途中、神はそんなにも試練が好きなのだろうか。
腕を組みながら歩いてる所へ、ちょうど曲がり角で志穂とばったり……。

 

「……」
「……」
「……」
嗚呼!イカン!!なにか会話を!!!あたふたしているうちに、お嬢が真っ先に口を開いた。
「ふふ……志穂、ご飯はしっかり食べないといけないわよ?せっかく晋也が作ってくれたんだから……
勿体ないでしょ?」
あわわわわ………な、なんて挑発的な事ヲ!!一方の志穂は、お嬢をキッと睨んでいる。こ、こえぇ!!
……と思ったら、ゆっくりと近付いて来て、空いてるもう片方の腕を掴む。
んー。まぁ、ハタから見れば(見る奴もいないが)軽いハーレムだが、当事者にすりゃ生と死の分かれ道。
心臓がキリキリと悲鳴をあげそうだ。
「駄目……」
力は弱いが、その言葉からは強い意志を感じる。
「え?」
「渡さない……たとえ、お嬢でも…晋也だけは駄目!!!」
また志穂の瞳から涙が流れる。………こんな壊れそうな志穂は見たことがない。
「だ、駄目って言われてもね、晋也自身が私を選んだんだから、志穂に入り込む余地は無いのよ!」
俺の眼前で火花が散る。あ、熱いっ!!
それにしても、こんな美少女二人にここまで愛されてるなんて、ボカァ幸せです!!
「嘘!嘘よね?晋也。お嬢に騙されてるんでしょ?」
「騙してなんか無いわよ!!変な言い掛かりつけて晋也を惑わさないで!」
……すまねぇ、志穂。こうするしか…ないんだ。
「お、おう…俺が好きなのは……お嬢…だ。」
「嘘…嘘よ……いや、イヤアァァァ!!」
そう叫ぶと同時に、走りさってしまう。
「し、志穂!」
勝手に体が反応する様に、追いかけようとするが…
「ま、待って!いっちゃダメ!」
お嬢が腕を掴んで離さなかった。お嬢も泣きそうな顔で訴える。
「今、私のこと好きって言ったよね?だったら……だったら、あの女を追いかけないで、私の側に居て。
晋也がいないと、私駄目なの……」
嗚呼……どっちを選んだにしろ、俺、後悔しそうだ………


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