広き檻の中で 第30回
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「きっつー……はぁ…はぁ…」
放置されてからどれぐらい経っただろ。最早この屋敷の中では時間なんて意味ないかもね。
「はっくしょん!」
!!!!
くしゃみだけでいきそうになる。目茶苦茶敏感なままだ。まぁ、最初に比べりゃまだましか。
ガチャガチャ
「うあ…外れねえって……」
こんなの平々凡々の俺には取れねぇよ。足にだって枷もある訳だし。
「どーしよ。」
絶望にうなだれて居ると……
カチャ
また白い空間が切れ、お嬢が入って来る。今度はトレーの上に何か乗っけて持ってきた。
「ふふふ……ご飯よ、晋也。」
トレーの上のご飯は、お粥と鳥のササミ、麻婆豆腐だった。……腹減ったな。そういや。
が、しかーし。そうやすやすとはくわんさ。
「ふーふー……はい、あーん。」
『普通』だったら萌ゆるシチュだろうが、こんな監禁状態じゃ全く興奮せんよ。(一部は薬により例外)
「いらない。」
口を結び、プイッと横を向く。できる限り反抗しちゃる。
「どうして?なんで食べてくれないの?」
「……どーせ、薬入ってるんでしょ?」
「うっ」
HAHA!図星だ。
「私が自分で作ったのよ?」…あちゃー。そりゃポイント高い。
確かに、里緒さんが作ったにしちゃ形が歪だと思った。そういや、里緒さんどこ行ったんだろ……
「だとしても、ダメ。」
男として最低の返事だろうが、場合が場合だ。これ以上薬漬けになったら困る。

「はぁ……しょうがないわね…」
そうぼやくと、蓮華に盛ったお粥を、自分の口に含み……
「ん、んん!」
口移しされた。こいつぁ不意打ちだ。
ゴクン。
お嬢の唾とともに食べ物が喉を通る。ぐぅ、意外とうまい。
「あ、は……どう?おいしい?…」
また薬が効いてきた……即効性だなあ………
「あ、ぐぁ……あ。」
ビクビクビク
出しっ放しのペニがまた脈打つ。…こんなんじゃ食欲も失せるわい。
「あ、はぁ……わ、私にも薬効いてきちゃった。……でもまだダメ。」
そう言ってまた食事を開始する。あかん。抵抗できん………。






結局全部食べちまった………
「ご、ごち、そ…さま…」
まだ少し余裕を見せつけられる。……ぎりぎりだけど。
「ふぅ……あはは…もうはち切れそうね。…苦しいでしょ?楽になりたい?」
コクコクコク
声も出ずに、首を振った。もう理性も我慢もあったもんじゃない。
「ふふふ…じゃあね、私の事、好きって言って。愛してるって。あんな負け犬なんか、
もう構わないって誓ってくれたら、なんでもしてあげるわよ。」
………そうきますか。
「簡単でしょお?私だけを愛すればいいんだから……あんな女、すぐに忘れられるわよ。」
「……だ。」
「え?」
「い、や、だ。」
はっきりいってやるさ。
「なんで?なんで?!私のこと、嫌いなの?優しくしてくれたんだから、好きって事なんでしょ?」
「そうじゃ…ないん、だ、よなぁ……ありき、たりに言えば、LikeとLoveの違いって、
やつさ……お嬢は、ぜ、前者な、のさぁ……」
お嬢の顔が段々こわ張る。
「そ、それになぁ……『愛してる』って言葉……は…既に、予約済みなんだな…ぁ……はは……残念…。」
「なんで……なんであの女がいいのよ!!もう目を覚まさないのよ!私がいる限り!!!
あの女が生きることなんてできないのよ!!」
「いいよ…べつに……俺、我儘だし……しつこいから、死ぬまで、ま、待つサ!」
「くっ!!あきらめない!絶対に晋也は、私の物!それだけは誰にも譲らない!!」
そう叫ぶと、部屋の外へ走って出てしまった。
諦めては……くれないのかなぁ……


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