広き檻の中で 第25回
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ドアが邪気を放っていた。黒い黒いオーラだ。お嬢との行為を終え、
一人後片付けをして戻って来たときのことだった。
「こいつぁアブねぇ匂いがプンプンするぜぇ〜」
ドア「………」
「どうしたんだい?ドアの旦那。」
ドア「私は女よ。」
「おっと、そいつはすまねぇ。まぁ、何にしてもそのオーラを消さない事には部屋にはいれねぇんでさ。」
ガチャ
「わ、ばっ!消さないまま開けるとゲームオーバーだ!嗚呼!邪気が体を蝕んでいくぅ!!!」
「………邪気で悪かったわね……」
「なぁーんだ。志穂か。どうしたんだい?こんな時間に?」
もう十二時だってのに俺の部屋に来るなんて珍しい事だ。
「ん……まぁ、……ちょっとね……」
いつになくしおらしい。下を俯いたまま話し続ける。
「ほら……ゲームで負けてお嬢にあんたを独り占めされて悔しかったからさ〜。なんとなく、ね………」
「……あ?あぁ…」
予想外の言葉にちょっと戸惑う。だって…なぁ?
パッと笑顔で顔を上げ、いつもの調子に戻ったように言い放つ。
「あんた、二人っきりだからってお嬢にHな事しなかったでしょーねぇー?」
「へ?……」
冗談で言ったつもりなんだろうけど。
「あんたのスケベ性は生まれつきだからねぇ。」
いつもみたいにおどけてやればいいんだけど。
「まったく、変な心配しちゃったわよ。」
彼女の言った偶然があまりに的確で。
「やった……」
あまりにも重い罪悪感で。
「え?」
自分の意思とは逆に。
「お嬢とHした。」
「ま、またぁ、変な冗談は止めてって。」
「冗談じゃないさ。」
今思い返してみれば、なんでこんなこと言ったんだろう。
「……嘘なんでしょ?」
「嘘じゃない!」

 

ガッと志穂の肩を掴んで。目を真っ直ぐ合わせて。
「おじょうとせっくすした。」
「は、ははは………嘘……嘘よ……」
志穂の目から生気が抜けていくのがわかる。
「嘘……嘘……嘘……よ…ね……」
そう呟きながら俺の頬を撫でる……くすぐったい。
「私の……晋也……私だけの物なのに……この目も……髪め…口も…全部…全部私のものナノニ!!!」
グッと手を首に掛け、力を込める。ぐ、ぐるじいヨ。志穂……
「なんで?……なんでお嬢なの?………私が……私がいつも一緒にいるのに……ナンデ!?ナンデ!?」

次の瞬間、口を塞がれた……所謂キッスだ。
「わかった……そうよ……お嬢に…あの女に襲われたんでしょ?無理やりやられちゃったんでしょ?
…ふふふ…よごされちゃったのね?あの汚い女に……大丈夫…大丈夫よ…私がきれいに……
あの女の匂いが全部落ちるぐらいきれいにしてあげる……ふふふ…あはは
渡さない……私以外の女が晋也に触れるなんて…絶対に有り得ないンダカラァァァァ!!!!…」
嗚呼……ちっくしょ…またレイプかよぅ……

「ん……晋也……んん?……」
目が覚めた。どうやら晋也とやり終わったあと気を失うように眠ってしまったらしい。
それとも……夢だったのだろうか。
「痛っ……」
股間に痛みがある。やっぱり夢じゃなかった。うれしい痛みだ。
良く見るとしっかりと服を着ていた。………晋也が着せてくれたのだろうか。
その光景を想像するだけで顔がまた熱くなってしまった。
「ふふふ……ついに…ついに晋也と………」
長い間待ち続けていた愛しい人と結ばれる事ができた。後にも先にもこれ以上の幸福は無いだろう。
ハァ……
溜め息ばかり付いてしまう。まったく、長い間生きてきた私が、
初めて恋と言うものを知った少女同然ではないか。
ハァ……
また溜め息。
もうこれで晋也は私のものだ。他の女に目をくれるだなんて有り得ない事だ。
志穂と里緒をさっさとこの屋敷から追い出し、晋也と二人永遠に幸せな日々を送ろう。
「……寒い…」
さすがに冬となると、体の芯から寒くなる。
「……そうだ」
こういう時こそ晋也に暖めてもらおう。
互いに抱き締めながら暖めあって、同じ部屋で朝を迎えるんだ。
「えへへ……」
その様子を思い浮かべただけで、柄にも無い笑顔がこぼれてしまう。
「思い立ったら即実行。」
ベットから降り、カーディガンを羽織い、幸せ一杯のまま晋也の部屋へ向かった……


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