広き檻の中で 第2回
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結局志穂のフック2発で争いは終わった。よく考えれば俺何悪いことしたんだろう?と思うが、
問うてみたところでもう一発フックをもらうのがオチだ。
おとなしく料理を作る。今日は結局ピザにした。本当にメニューには悩む。
「おいしかったです。」
「ごちそうさま〜」
「あんた……腕前上げたわね……」
それぞれ感想を言い、片付けにはいる。作った人が片付けるという決まりだ。
居間に戻るとテーブルを囲んでトランプの用意をしていた。この屋敷で許される数少ない娯楽だ。
テレビもラジオもないため、いくらこの生活に慣れても暇と言う感情は処理できない。
「ンで?今日は何ヤンの?ポーカー?ダウト?ページワン?」
「ババ抜きです。」
「そっかぁ〜。残念だな志穂。ババ抜きだっ………了承。ナイフをしまえ。」
武力に勝る脅しはないよネ。
「ちなみに三人で話した結果、勝った方には賞品を贈呈することにしました。」
「ヘえー。賞品って何?」
「あんたよ。」
「晋也です」
「晋也さんですよ〜」
三人で一斉に指を指す。サラウンドの威圧が俺の心を突き上げる。
「晋也を今夜自由にできる権利よ。」
「ウェイト!!俺は物じゃない!!拒否権を執行しようじゃないか!!」
「パッパと配っちゃいましょ。」
「聞いてくれよぅ……」
願望とは裏腹に事は進む。
「この勝負。負けられませんわね。」
「佐奈様には失礼ですが、本気でいきますよー。」
「夜はそう長くないからね。早く終わらせるよ。」






「神は朕を讃えた。」
結果。俺の一人勝ち。三連勝のぶっちぎり。これで俺の貞操は守られる事になった。
「うぅ……悔しいですが……仕方ありませんね。」
「あら〜。晋也さん強いですね〜。」
「くそーー!なんであんたが勝ってんのよ!!!」
三者三用の負け台詞をはく。こんな状況で「実はズルッ子してたんだ」なんて言えるわけが無い。
三人は背中に鏡を背負うようにして座っているため、目の良い俺には丸見えなのだ。
「さ、はよう片付けやんしょ。」
ばれる前にちゃっちゃと急かす。
片付けが終わり、風呂に入ろうとした時に志穂に声をかけられる。
「今日。あんたのばんでしょ?」
「あー…そうだった。」
今日の『当番』は俺のため、佐奈嬢の寝室へ向かう………





「お、俺、もう我慢できないよ……」
「ふふ…慌てないで。まだまだ始まったばかりよ……んっ!ふぁ……は、はいってくる!」
『剛直した俺のモノが、彼女の秘部を貫く。淫らな水音が部屋中に響く。』
「あぁ!す、すごい…すごい締め付けだ!これじゃあ俺、も、もう。」
「いいの…ん!好きなだけ、あぁ。たくさんしていいのよ!!」
限界をむかえた。
「あ、先生!イ、イクっ!」
「ああぁー!!私も、イクゥーー!!」
「今日はまた一段と難しい本ですね」
………無知とは罪ナリ。佐奈嬢は毎晩寝る前に本の読み聞かせをしないと寝れないのだ。
だから今日当番だった俺は昼間に買って来た『淫乱教師〜魅惑のレッスン〜』
という小説を読み聞かせてみたのだが、ちっとも恥ずかしがりやしない。
感情をこめて読んだこっちが恥ずかしい。
「は、ははは……まぁ、今日はここまでです。おやすみなさい、お嬢。」
そそくさと部屋を出る。佐奈嬢の前でこの小説を読んだせいでジョンソンが興奮してしまった。
ある種の羞恥プレイだネ。





バタン
「ふぅ…」
慌てて出ていった晋也を見送り、そっと溜め息をつく。
まったく、晋也の奴め。私が何も知らないと思ってあんな本を読み聞かせるなんて……
私だって知らないわけじゃない。その……愛し合う男女が……せ、セ、セッ……
をすることぐらい知っている。
でもああやって知らないふりをしていると慌てる晋也の顔がまた愛しい。
いずれ私も…セッ…セッ…をするのだろうか。いや、するだろう。もちろん相手は晋也だ。
私は晋也以外の男を知らない。だったら私と晋也が愛し合うのは必然的な事。
でもこの屋敷にはその愛を拒む邪魔者が二人いる。志穂と里緒だ。
しかも二人とも晋也に気があるのは見てわかる。なんとか駆除できないだろうか。
父様が死んで私が当主となれば、当主権限を使って煮るなり焼くなりできる。
でもそのまえに二人が晋也をたぶらかしてしまったら意味が無い…………
晋也について思考を凝らしていたら晋也の顔が見たくなった。時間は11時間。
今頃は里緒は明日の朝の下ごしらえ。志穂は屋敷中の戸締まりに行っている。晋也は暇な時間なはずだ。
ガシャン!!!
近くにあったツボを落とす。これですぐに晋也が愛する私の下へ駆け付けて来るはずだ。
さぁ、早く来なさい……私の晋也………


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