僕のたったひとりの友達が死んだ。
スピードの出しすぎでカーブを曲がりきれなかったらしい。
両親が死んだ時と同じ喪失感。
いや、あの時は全てを理解するのには幼すぎた。
今の喪失感のほうが途方もなくおおきい。
通夜の席、放心する僕の横で泣きじゃくるさやか。
……無理もない、恋人が死んだのだ。
隣のさやかを慰めようと、手をのばした瞬間にふと違和感を感じた。
何かがおかしい。
さやかは悲しんでいる。真っ赤に腫れた目なんかはひどくいたいたしい。
ただ、彼女から流れでる空気が異様なのだ。
明らかに、僕や他の参列者とは異質……。
例えていうなら、野菜の中にひとつ果物が混じりこんでるよう。
考えすぎか……。
駒野くんの死にショックを受けて、一時的に論理的思考ができないだけだ。
………また、ひとりに戻ってしまった……。
いや、一応さやかはいるが……。
通夜も終わり僕とさやかはそろって家路につく。
「これで……」
後ろを歩くさやかが何かをつぶやいたが、言葉はすぐに夜の闇に吸い込まれてしまった。
僕はさやかが何をつぶやいたか尋ねようとした……が…やめた。
何か口を開くと、僕まで闇に吸い込まれてしまいそうな気がしたから。
「これでまた、亮くんには私しかいなくなったね」