Which Do You Love? 第1話
[bottom]

「お見合いぃ?!」
麻子の第一声はそれだった。
「まぁな。」
さらりと流す。
相澤麻子…中学からのクラスメートだ。なんとなく気が合い、腐れ縁、とでも言うのか。そんな中だ。
俺とは違って友達が多いくせに、何故か毎週土曜日は駅前の喫茶店でこうやって雑談をすする奇特なやつだ。
こんなとこで俺みたいな奴と話してるなら他の誰かと出かけた方がよっぽど有効だと思うがな。
まぁ、毎週約束してるわけでもなくここに来る俺も同じか。
「なんだってまた…どうして?…あ、もういいです」
「親父の企みなんだよ…あ、俺もいらない…あつっ!」
コーヒーのおかわりを止めようとカップの上に手を出した…が遅かった。ちょっとコーヒーが手にかかる。
ウエイトレスは何食わぬ顔で立ち去る。ちきしょう。
そんなこんなで事情を話す。
始まりは昨日、親父から電話がかかってきた。
「もしも…」
「喜べ!聖!我が高嶋家にも春が来た!!」
「…毎回電話に出る度に叫ぶのはやめろ。」
「ゴホン!あぁすまん。年甲斐も無く興奮してしまったよ。」
「…で?」
「冷たいなぁ…まあいい。聞け!息子よ!お見合いだ!」
「はぁ?」
「あのな!…」
簡略するとこうだ。
親父とその働いている会社の社長が昔からの幼馴染みらしく、そのことに最近気付いたらしい。
そこで一緒に飲みへ行き、話が盛り上がって来た所で互いの子供の話になったらしい。
そしたらなんと互いに同い年、恋人なしと来た。
そこへ社長の方から見合い話を出したらしい。普通に考えれば、
部下の平社員の息子との見合いなど、向こうにしてみればなんのメリットも無い。
まぁ、酔っていたし、幼馴染みだったから気も緩んでいたんだろう。
当然親父は即賛成。さっき叫んだように春がくるからだ。

「…なんだ!だから来週の土曜日。お見合いだぞ!いいな!………ってことらしい。」
一人二役で声色を変えながら演じ、麻子に伝える。周りの客はドン引きだ。
こんなんだから友達少ないんかな。真剣に聞いてくれる麻子に感謝だ。
「ふーん…で?行くの?お見合い。」
「…まぁ形だけはな。なにも出たからってはい結婚、ってな訳でもないし。」
「そう…でるんだ…」
珍しく寂しそうな顔を見せる。なんて顔してんだ。別に俺とは付き合ってるっていう仲でもないし。
ただ仲が良いだけ。互いに気が合うからいい話仲間。
俺だって。女として好きっていいう感情はない。だから麻子が心配することじゃないんだが。
「まぁ、金持ちの社長のお嬢さんってやつだからな。世間知らずで頭ん中お天気になってるかもな。」
窓際にあった造花を頭に付け、おどけて笑ってみせる。麻子も釣られ笑い。
なにフォローしてんだ?俺。
「ふふ、そうよねー。あんたみたいながさつな男が、社長の娘となんか釣り合うはずも無いわよねー。
ま、身分の差を見せつけられるのが関の山ね。」
こっちが下手に出れば言いたい放題言いやがって。結婚するとか言ったらもっと悲しませてやれたかもしれんな。
ん?なんで悲しむんだ?……わからん。


[top] [list][Next: Which Do You Love? 第2話]

Which Do You Love? 第1話 inserted by FC2 system