絆 第3話
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ジリリリ〜ジリリリ〜
朝を知らせる目覚ましの音が鳴った…。
ジリリリ〜ピッ……
弘樹が目覚ましを止めて起き上がった
「んんん〜……あれ??」
そして時計のさす時間を見て驚いた。
「えっ…もうこんな時間!?」
時計の針は待ち合わせの時刻、十時をさしていた。
「やばいっ!!完全に遅刻だよ…後藤さん待ってるかな…」
(でもどうしてだろう…昨日は遅れないぐらいにちゃんとセットしておいたのに…)
弘樹は急いで服に着替え、出かける準備をした。
そして足早に玄関へと向かった。
「由紀姉もう僕行くから!!ん…??由紀姉!!」
弘樹の声には何も返ってこなかった。
(由紀姉も出かけたのかな??)
そんなことを考えたが、今はそんなことを考えてはいられないとおもいなおし、急いで外に出た。
ガチャッ!!
「由紀姉がいないなら鍵閉めなくちゃ」
ガチッガチッガチンッ!!
「よしっ!!これでOK」
鍵を閉めた弘樹は待ち合わせの遊園地に向かい走った。

そのころ遊園地の門の前では……
(弘樹君遅いな…忘れちゃってるのかなぁ…)
一人でずっと待っている沙耶花の姿があった。
(どうしよう…もうこないのかな…ううん、もう少し待ってみよう。
せっかく弘樹君のためにお弁当だって作ってきたんだから!!)
そして、もうすぐ時間が十一時になる頃に弘樹は到着した。
「ご…ごめん、後藤さん…ハァハァ…待った……に決まってるよね」
「あっ弘樹君!?よかったきてくれたんだね。もうきてくれないのかとおもったよ」
「ホントにごめんね!!ちょっと寝坊しちゃってさ……」
「いいよいいよ。ちゃんときてくれたし…それに待ってるのもデートのうちだしね♪」
弘樹はその言葉を聞いて素っ頓狂な声をあげた。
「デ、デート!?」
「そうだよ♪若い男女が二人きりでお出かけなんてデートだよ」
「そ…そうだよね」
(デート…そうだよね。考えもしなかったけど、これってデートになるんだよね)
デートなんてことを考えていなっかた弘樹は少し焦っていた。
「とりあえず中に入ろうよ弘樹君♪」
「あ…うん」
(ほんとどうしよう…僕デートなんてしたことないしな…)
そんなことをおもいながら沙耶花と中に入っていった。

そんな二人の後ろ姿を見つめる人影・・・。
「やっぱり・・・」
その人影は由紀のものだった。
別に弘樹のことを信じていないわけではなかった。ただ、女の勘というものなのだろうか、
由紀は何か嫌な予感がして弘樹の後をつけていたのだった・・・。

 

 

 

「弘樹君まずはどれ乗ろうか??」
「そうだな〜、後藤さんの好きなのでいいんじゃないかな」
(僕、全然エスコートできてないよ・・・)
「じゃあアレに乗ろうよ!!」
「アレ乗るの・・・??」
沙耶花の指の先にあるのはジェットコースターだった。
「ダメかな??」
「そ、そんなことないよ。乗ろうか!!」
(僕、本当はああいうのは苦手なんだけど・・・仕方ないよね・・・ハァ〜)



「楽しかったね弘樹君」
「う、うん。そうだね」
苦手な乗り物に乗せられ元気を無くした弘樹。そこに追い討ちをかけるように沙耶花は次の乗り物を示した。
「次はアレにのろうよ♪」
「・・・・・・」
沙耶花の示した先にあるのはバイキングだった・・・。
「そうだね。あれに乗ろうか・・・」
(後藤さん絶叫系好きなのかな・・・こんなのが続いたらさすがにやばいかも)
そんなことを考えずにはいられなかった。




「次はアレ!!」
「ハァハァ・・・」
その後も沙耶花と弘樹は色々な乗り物にのったが、どれも絶叫系で弘樹は心身ともに疲れた状態になり、
昼をだいぶ過ぎた時刻を迎えることになった。
「どれも楽しかったね弘樹君♪」
「そ、そうだね・・・」
(どれも絶叫系だったから正直疲れた・・・でも、こんなに後藤さんが喜んでくれてるなら
乗ったかいがあったかも)
弘樹は後藤さんの笑顔を見ていたら、疲れなどどうでもよくかんじてきていた。

そんな二人のやりとりを見ている由紀。
「何・・・なんなのあの女!!私の、私のヒロとあんなに楽しそうに喋って・・・ヒロもヒロよ!!
デレデレしちゃって」
二人を見ている由紀に生まれてきたのは怒りという感情だった。

 

「そういえばお腹空かない??」
時間的にお腹が空いているころだろうとおもい、沙耶花にそう尋ねた。
「あっ!?もうこんな時間なんだね。うん、何か食べようか」
(よ、よし今日は私が作ってきたお弁当食べてもらうんだから!!お昼はだいぶ過ぎちゃったけど・・・)
「後藤さん何が食べたい??僕買ってくるけど」
そう言う弘樹に沙耶花は恥らいながら、言葉にする。
「あ、あのね・・・今日は私弘樹君のためにお弁当作ってきたんだけど、食べてくれるかな///」
「えっ!?僕のために」
「う、うん。弘樹君のために///・・・もしかして迷惑だったかな??」
「ううん、そんなことないよ!!すごい嬉しいよ!!」
(僕のため・・・か。女の子にお弁当作ってもらうなんて由紀姉以外で初めてかも。なんか緊張するな・・・)
心の中ですごい動揺をしてしまっていた。
「それじゃあ、あそこに座って食べようよ弘樹君♪」
「あっうん。そうだね」
そうして二人は近くのベンチに座り食事を始めた。



「ごちそうさま!!」
「おそまつさまでした。ど・・・どうだったかな味のほうは??」
「すごいおいしかったよ!!久しぶりにあんなにおいしいご飯を食べた気がするよ」
「ホ、ホント!?よかった〜弘樹君のお口に合うか心配だったんだよね」
「全然問題ないよ。こんなにおいしい料理がつくれるんならいつでもお嫁さんに行けるね」
「ほ、褒めすぎだよ〜///」
(お嫁さんかぁ〜///弘樹君のならいいな・・・なんて)
「そんなことはないとおもうけどな。自信持っていいとおもうよ。
それじゃ、ご飯も食べたし少し休憩したらまた何か乗りに行こうか」
「そうだね」
こうして二人の食事の時間は終わっていく。

そのやりとりも由紀はずっとみていた・・・。
「弘樹・・・私の前でもそんな笑顔最近見せないのにその女には見せるんだね・・・。
やっぱりその女のせいなんだね」
そう呟きながら二人を見つめる由紀の影は消えていった。

弘樹はもう遅いので沙耶花に帰ろうと促した。
「えっ!?もうこんな時間なんだね・・・。楽しい時間ってすぐ過ぎちゃうんだよね」
「そうだね。こんなになるまでつき合わせてごめんね」
「全然いいよ。私もすごく楽しかったから。今日は誘ってくれてありがとね」
(ホントのホントにすごい楽しかったんだよ・・・大好きな弘樹君と一緒だったから・・・
本人には言えないけどね///)
「そういってもらえると助かるよ」
こうして二人の楽しい時間にも終わりがやってきて、遊園地の門の前で別れようとしたとき、
沙耶花が弘樹に言った。
「あ、あのね弘樹君」
「ん、なに??」
「最後に一つお願いがあるんだけどいいかな??」
「別に僕にできることならだけど」
「あのね、その・・・」
(後藤さん何を言おうとしてるんだろう・・・)
「そのね弘樹君・・・私のことなんだけど」
「後藤さんがどうかしたの??」
「それ!!それなんだけど・・・これから私のこと沙耶花って呼んでくれないかな///」
「えっ!?名前で呼ぶの!?」
急な沙耶花の言い出しに焦る弘樹。
「うん、出来れば弘樹君にはそう呼んでもらいたいのダメかな??」
「いや、後藤さんがそれでいいって言うなら僕は構わないけど・・・」
(女の子を名前で呼ぶなんて少し恥ずかしい気もするな・・・)
少し考え、意を決して弘樹は言った。
「じゃあ・・・さ・・・沙耶花でいいのかな??」
「うん・・・ありがとう///これからはそれでお願いね・・・///それじゃあ弘樹君また明日学校で」
「うん。それじゃあね。」
こうして二人のデートは終わっていき、沙耶花と別れた弘樹は自宅へと戻っていた。



「はぁ〜それにしても今日は楽しかったな。最初はすごい緊張したけど、途中からは楽しくて
そんなの忘れてたし、
普段とは違う後藤さんも見れたし・・・・・・そうだ沙耶花って呼ばなきゃいけないんだっけ。
今更だけどやっぱ恥ずかしいな。でも、悪い気分はしないな」
そんなことを言っている弘樹の顔はにやけているのであった。
「それにしても由紀姉はまだ帰ってないみたいだけどどうしたんだろう??・・・まぁ由紀姉なら平気だよね。
しかっりしてるし。そんなことより僕はあした学校なんだからもう寝ないとな・・・」

こうして弘樹の長い一日が終わっていったのであった。


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