絆 第1話
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ジリリリ〜ジリリリ〜
今日も朝を知らせる目覚ましの音が部屋の中に響き渡る。
「うるさい…」
ジリリリ〜ピッ……
そういいながら弘樹は目覚ましを止め、また眠りに付こうとした。
ガチャツ!! その時ドアが開いた。
「ヒロ!!早く起きなさい!!学校遅刻するわよ!!」
大声で叫びながら由紀姉が部屋に入ってきた。


「ヒロ聞いてるの?早く起きないさい」
「起…きてる。起きて…るよ…Zzz……」


「まだ起きないつもりかしら?なら――」
由紀は弘樹の布団を掴みそのまま宙へと放り投げた。
その瞬間僕は空を飛んだ…。そののまま床へと落っこちた。
「グヘッ…。イッッテェ〜!!由紀姉何するんだよ」
床に落とされた僕は由紀姉へと抗議の声をあげる。
「ヒロが起こしても起きないからでしょ!!」
(由紀姉いっつもこうやって僕のことを起こすんだもんな……)
「早く起きて朝ごはん食べちゃいなさい!!」
「わかったよ…」
弘樹はしぶしぶ起き上がり、姉とリビングに向かった。
(由紀姉はちょっと乱暴だ…。でも、とても優しく強い姉だ…。僕はそれを知っている。)
僕たちは小さい頃に両親を事故で亡くしたんだ…。そして僕たち二人は親戚の家に預けられた。
その頃僕は小学生、由紀姉は高校生だった。
僕は両親を亡くしたこともあり、学校ではよく苛められ、よく泣いていた…。僕は弱かったから……。
そんな時にはよく由紀姉が優しく抱きしめてくれてたんだ。
「ヒロには私がいるから…だから泣かないで」
そう言って僕を慰めてくれた。そんな由紀姉のことが僕は好きだった。
年月が流れ由紀姉は高校を卒業し、就職をした。僕は中学生になった。
そして由紀姉は、高校でバイトして貯めたお金使い僕を連れて、親戚の家を出てアパートを借りた。
今はそこで二人暮らしをしている。由紀姉は一生懸命働いて僕のことを養ってくれている。
僕はそんな姉のことをとても尊敬している。今の僕があるのも由紀姉のおかげなんだ…。
なんだかんだ言って由紀姉はいつも僕のことを心配してくれている。
だから僕は、由紀姉が心配しないようにいつも笑顔でいるようにしている。
それが唯一僕が由紀姉にしてあげられることだから…。
「今日の朝ごはんもうまそうだね」
リビングにはすでに朝食の準備がしてあった。
「今日のお味噌汁は自信作なの。ヒロ、一杯食べてべね♪」
「うん。いただきます!!」
僕は由紀姉の作ったごはんを食べ始めた。少したって由紀姉が聞いてきた。
「ヒロ最近学校ではどう??」
「どうって…何が??」
「ほら、その…苛められたりとかしてない?」
「大丈夫だよ。今は友達だって沢山いるしね」
「そう?それならいいんだけど…」
「由紀姉は心配しすぎだよ」
「それはヒロのこと心配…だから」
「わかってるよ。でも本当に大丈夫だから」
(そう、僕は昔とは違うんだから…)
「ん…ごちそうさま!!」
「おそまつさま」
「それじゃあ由紀姉、僕学校行ってくるね!」
「わかったは。行ってらっしゃい」
ガチャッ!! 玄関を開け外へと出た僕。外は眩しく今日も天気がいいようだ。
「早くしないと遅刻しちゃう」
弘樹は足早に学校へと向かって言った。そしてその背中を見つめる由紀。
「友達がいっぱいいる…か。昔は私しかいない子だったのにな…」
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