小さな恋の物語 第3回
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綾姉ちゃんは笑顔で挨拶してる
奈菜ちゃんも笑ってる

なのに何故か僕のお腹は冷たい牛乳を飲んだ時のようにひんやりとして
頭の後ろのほうがチクチクとしている

「さぁ誠、宿題なら家に帰ってから私が教えてやろう。お友達に迷惑をかけたら嫌われてしまうからな」

そういって綾姉ちゃんは僕の手をぎゅっと握った
綾姉ちゃんの掌は温かい
温かくてじんわりと掌が汗ばんできた

「誠クン、私全然迷惑だなんて思ってないよ?家でおやつ食べながら一緒に宿題しましょ。ね?」

奈菜ちゃんの掌はヒヤッとして気持ちがいい
肘の裏にピリッと電気が走るような冷たさが脇の下を通って背中がゾクッとした
そのゾクッとした感覚が綾姉ちゃんの掌の温かさをなおさら意識させた

僕のお腹がカキ氷を食べたときみたいにキュウッと縮まって
頭の後ろがズキズキと音を立ている感じになってきた
この感覚はなんだろう?

学校の宿題を忘れたときの僕
給食にキライな物がでたときの僕

ちょっと違う気がする

綾姉ちゃんと霞姉ちゃんのどっちの隣に座ろうか考えてるときの僕
夜中に目が覚めたときにどちらに寝返りを打つかちょっとだけ考える僕

なんとなく近い気がする

綾姉ちゃんが僕を抱っこしてる霞姉ちゃんを見つけたとき
霞姉ちゃんが僕のほっぺたに付いたご飯粒を食べた綾姉ちゃんを見たとき

ものすごく近い気がする

でも今の綾姉ちゃんと奈菜ちゃんにはそれ以上の何かを感じる

コレはなんだろう?

右手の温かいが熱いに変わって頭の後ろのズキズキと混ざってきた
左手のヒンヤリが冷たいに変わってお腹のキュウッとした感覚と混ざってきた

その二つが僕の首の後ろの方で互いをじっと睨み合ってる感じがする

僕はコレの名前をしらない

コレは一体なんて言うんだろう?


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