鏡 Epilogue 最終話
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○月○日
昨夜市内のアパートの住民から、「隣りの部屋から悪臭がする」という通報を受け、
警察が駆け付けた所、室内には腐乱した女性の遺体と、腹部を刺された男性を発見した。
その場にいた女性に事情を聞くと、犯行を自任。即刻逮捕となった。
話しによると、腐乱した女性は犯人の双子の妹。男性は幼馴染みである事が分かった。
なお、男性の方は意識不明の重体だったが、すぐ近くの病院に運ばれたため、一命を取り留めた。
犯行の動機は……

バサ!
某刑務所の前。一人の男が新聞を広げて立っていた。よく晴れた天気で、刑務所の周りの桜も綺麗に咲いていた。
「まったく……二十年前の新聞を持ってるなんて聞いたら、笑われちまうぜ。」
そう面倒臭そうに言う。台詞とは反対に、顔は喜びと期待に満ちていた。
二十年。
ずっと待っていた、決して短くは無い時間。ただ彼女の為に生きてきた。
ガチャ。
刑務所の扉が開く。まるで少年のように胸が高鳴る。
桜の花びらが散るその先に。
彼女は優しく微笑みながら立っていた。
勝手に足が歩き出す。
とにかく嬉しかった。
なにも変わらない笑顔がまた見れたことに。
守るべき彼女が戻って来たことに。そっとまた抱き締める。
決して逃がさぬよう。逃げぬよう。
そう決めたのだから。
「…おかえり」
「ただいま…」
そしてまた始まる。彼らの日々が。
不安がある。もう取り戻せないものもある。悲しいことや辛い事も多いだろう。けれども彼らは挫けないだろう。
互いに愛し合い、支え合って生きてゆける「約束」があるから…………



The End


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