鏡 Ryo side 第4回
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同日 森崎宅

「姉さん、話があるの。」
「ん?なになに?」
夕食を食べながら真奈に話を切り出す。

「あのさ、真奈、涼さんと別れてくれない?恋人として。」
「え…?な、何言ってるのよ〜真由ったら。冗談はやめてよぉ。」
「私は本気よ、真奈。私が涼さんの恋人になるの」

「ちょ、ちょっと!何脈絡のない事いってんの?そんなのに賛成できるわけないでしょ!?」

「いいじゃない。真奈は周りから褒められて、友達も多いし、涼さん以外にも恋人なんてできるでしょ?簡単に。
だから私に涼さんを譲ってもいいんじゃないの?」
だんだんと目が座ってく真由。
「い、嫌よ!!涼くんだけはダメ!!絶対、絶対ダメ!やっと恋人同士になれたのに。別れるなんて絶対嫌!」
「フフ。アハハハ。恋人?真奈がしてるのは恋人ごっこじゃない。男としてじゃない、
幼馴染として好きの延長上にいるだけよ。私は違う。男として涼さんだけを愛せる。
涼さんがいれば他は何もいらないわ。真奈、あなたもいらない。」

「男として愛す?アハ、いいわよ。わかったわ真由。明日の昼休みが終わる頃、屋上に来なさい。
そうすれば私たちの仲がわかるから。」
そのまま味気無い夕食を終えた

翌日

晴れ渡る空。
「あー。良い天気だ。」
柄にも無い事を言ってみる。そうでないとおかしくなりそうだからだ。
「………」
「………」
「う」
重い。いつより明らかに機嫌が悪い。姉妹喧嘩でもしたのだろうか。まぁ俺の割り込む余地は無いだろう。
二人とも目が座ってるからあまり触れたくない。

教室

「坂巻君」
「あ?」
クラスの女子が教室に入った途端話しかけてくる。顔は覚えてるが名前は……忘れた。
「須加先生が探してたわよ。今度の委員会のことで。」
「あぁ、わかっ、だ!」

返事をし終える前にぐいと強い力で腕を引き寄せられる。見ると真奈が笑顔のままキリキリと腕を掴んでいる。
「高野さん、今度からそういうのは私に通してくれるかな?」
「え?あ、うん」
「ほら、職員室行くよ、涼くん。」
強引に廊下に引きずり出される。
「一人で行くっての。なんだよ、いきなり。」
「アハ、ダメよ。私がいないと、また変なのが寄ってくるでしょ?涼くんの居場所は私の隣りだけでしょ?」
そう言って腰に絡むように抱き付いてくる。歩きにくいし周りの目線が痛い。そのまま職員室へ。
須加も話ながら俺に目を合わせない。職員の目が痛い。
結局授業中以外はずっと隣りに引っ付いていた。須加に言われた事を同じ委員の池田に伝えようと話しかけたら、
思いきり抓られた。
「いだだだ!」
「アハ。だから、私が、代わりに伝えるって、言ったじゃない。」
真奈の手を払う。
「あのなぁ!拘束するつもりならやめてくれ!」
「拘束?違うよー。恋人として当たり前の事でしょ?常に隣りにいて、何が悪いの?」
「そんな一方的に押しつけるのはやめてくれ。恋人でもある程度距離をあけるもんだろ。それに今日のお前、
なんか変だぞ?真由と喧嘩したからって八つ当たりはやめ…。」
「真由の名前を言わないで!!」
そう叫びながら胸倉に掴み掛かり、強い力で締める。苦しいと肩を何度か叩くと、我に帰ったように手をはなす。
「あ、り、涼くん。ごめんね。ごめんね。苦しかったよね?ごめん。もう二度としないから許して。嫌いにならないで。
ごめん、ごめん、ごめん。」
半泣きで抱き付いてくる。正直恐怖を感じた。今日は逆らわない方がいいな。

「わかった、わかった。許すから。…飯食いに行くぞ。」
「うん!!」
晴れた笑顔で教室を出ていく真奈。それを追う様に、静まった教室から俺も抜け出した。


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