鏡 Ryo side 第3回
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今日は雨が降っていた。雨は嫌いだ。憂鬱になる。いつものように姉さんと朝食をとり、玄関を出る。

「おはよう。真奈、真由」

「おはよ!涼くん」
「おはようございます、涼さん。」
やっぱりだ。涼さんはいつも姉さんから先に呼ぶ。なんでだろう?
私も姉さんもそう変わりないのに、いつも姉さんしか見てない。なんでなんでナンデ?
口が悪いけど私たちには親しく接してくれる涼さん。
お母さんたちが事故で死んだ後、自分の親の離婚や失踪にも弱気を見せずに私たちのことを一番心配してくれた涼さん
似合わなくも可愛らしい黄色い傘をさす涼さん。
滅多にしないオレンジの香水に気付かない鈍感な涼さん
どんな涼さんでも私はアイシテイル。なのにナンデ姉さんなの?

姉さんと同じ顔、同じ体、同じ声なのに、いつも周りから姉さんが評価されていた。
唯一性格が違った。姉さんは誰にでも優しく明るい。私だって昔からそうだった。
でも、お母さんたちが死んだ時、私はそのショックを受けきれず、他者との交流を閉ざしてしまった。
まともに喋れるのは姉さんと涼さん、それと2、3人の友達だけ。
でも姉さんと涼さんが「恋人」という形で付き合い始めてからは、二人にも話しずらくなった。
その影響で友達とも話す回数が減り、クラスでは孤立してしまった。
二人の仲を恥ずかしながらも幸せそうに話す姉さん。彼女は嫌味や自慢で話しているのではない。
天然なのだ。それは私が一番よく知っている。でも私はそれを素直に聞き入れられず、曲がった形で受けてしまった。
それに気付いた頃にはもう手遅れだった。
一度点いた黒い炎はもう消えない。すべてを燃やすまで

姉さんが、姉さんが私からすべてを奪うんだ。周りの評価も、人生も、愛する涼さんも…………。

だったら

奪い返せばいい。


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