合鍵 第31回
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藍子「止めてっ!!止めてっ!!!もう、止めなさい!!
   止めてって言ってるでしょう!!!!!!!
   いい加減にしてよっ!!!離れなさい!!!!馬鹿ッ!!!
   もとくんから離れて!!!離れてよっ!!!!!!!!!もとくんに触るなあッ!!!
   この変態!!もとくん、もとくん、!!
   死ね!!死んじゃえっ!!!!」
あらん限りの声を振り絞り、藍子は叫び続ける。手錠がされてるにも関わらず、体を暴れさせている。
だが、それを無視して、いや、その憎悪に燃える藍子の叫びこそが目的だったのだろう、
サキは元也の上で体を動かし続ける。

一晩が過ぎた。
藍子「止めて、止めて、お願い、止めて。
   もういや、もういや、もういや、もういや。
   おねがい、お願いしますからもう止めて。
   お願いだからもとくんから離れて。離れて」
焦点の合わない瞳をしながら、藍子はつぶやき続けた。
目の前で元也が襲われ続けるのを見せられた。
その瞳からは涙が流れ続けている。
口も開きっぱなしになり、よだれが床まで、糸を引いていた。

さらに、もう一度夜がきた。
藍子「……………………………あ、あああ、あああ………
   ……やめ………あ、あ…いや…………………………
   …う、うう、あ、うううううううううううううううう
   うううううううううううああわああああうううううう
   うええううああああああああああああああああああああ」
藍子は体をまるめ、蹲っていた。
元也とサキの乗っているベットに背を向け、うめいていた。
だが、藍子の耳には元也が襲われている音が入り続ける。
手が自由なら、藍子は自分の耳を潰しているだろう。
いや、サキに飛び掛って首を絞めているだろう。

サキ「はあ、ちょっと、休憩ね」
丸一日、元也を弄び続けたサキが、やっとベットから離れた。

トイレに行く為、手首を絞めている縄を解いてくれた。
ホッとしたのも束の間、新しく取り出した手錠で後ろ手で拘束された。

トイレから出て、リビングに連れて行かれた。ソファーに座る。
途端、引きずりこまれるように、元也は眠りに落ちた。当然だろう。
比喩でなく、一晩中責められ続けたのだ。

藍子「うう、あああああああああああ、あああ、うううああ」
元也とサキが部屋から出て行ったのに、藍子はうめき続けていた。
顔に生気がない。目が死んでいる。

そんな藍子の様子を、サキが後ろから見下ろしていた。愉快そうに。
サキ「あららん、壊れちゃった?藍子ちゃん?」
サキが藍子の顔を覗き込みながら声をかける。

瞬間、藍子の瞳が怒りで見開かれる。
叫び声をあげながら、サキに飛び掛ろうとした。
だが、首輪のせいで、サキに届かない。それどころか、首が絞められ、咳き込む。

藍子「死ね死ね死ね死んじゃえ。死ね」
サキ「うわ、怖。でもね、想像してね?藍子ちゃん。
   私が入院中、あなた、こんな事してたんでしょ?想像つくわよ。
   今のあなたと同じぐらい、私も貴女が憎かったのよ。
   だから、コレは、貴女への仕返し。
   あ、だからと言って、愛が無い行為って訳じゃないから。
   あれだけしつこく、ねちっこく元也君をいじめちゃったのは、恋焦がれていたから。
   なんたって、数週間ぶりだもんね。そりゃ、もえちゃうよ」
藍子「うるさい!!サキさんなんかに、もとくんを触る権利、無いんだからっ!!
   サキさんがしてた事、あれは立派なレイプよ!!犯罪よっ!!!
   おかしいんじゃないの!?狂ってるわよ!!!」
サキ「じゃあ、藍子ちゃんがしたことは、何なの?
   手首切って元也君の気を引こうだなんて、やり方として最低じゃないの」
藍子「そんな事無いもん!!もとくんは元々、私の方がサキさんより好きだったんだから!!!
   もとくん、気が付いただけだもん!!私のところに帰ってきただけなんだからっ!!」
サキ「その割には、私がここで元也君を見たとき、手首縛られてたわよ?
   分かってたんじゃない。元也君、ああでもしなきゃ、逃げちゃうって事」
藍子「違うッ!!あれは、あれは、違うもん!!!
   もとくん、逃げたりしないもん!!!
   あれは、あれは、あれはあああ、あああああああああ、
   そうよ、そうよ、もとくんを縛ってたの、貴女みたいな人に、もとくんを取られない
   為なんだから!!」
サキ「嘘おっしゃい。それなら、何で縄で縛るのよ。あんなの、他の人が来たら、即効で解かれるじゃない。
   認めなさいよ。
   あれは、元也君を逃がさない為だって。
   そうでもしなきゃ、元也君、あなたの側から離れていっちゃうものねえ」 
藍子「違うッ!!!!違う!!!!!!」
サキ「違わないわよ」
藍子「うあ、ああああああああああああああううううあうああうああ
   ああああああ??……あ、ははは」

藍子を言い負かしてやった。
ああは言ったが、本当を言えば、元也が逃げ出すような事は無かったとサキには分かっていた。
元也が、あんな状態の藍子を放って、どこかに行くはずはない。

分かっていても、藍子を罵る事は止めれなかった。
うずくまり、泣いている藍子を見るのは、胸をすく、どす黒い勝利感があった。

藍子「………あ、ははは、ははははは、うふ、ふふっふふふふふふふ」
急に、藍子が笑い始めた。
正気を逸した、おかしな笑い方だった。


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