合鍵 第28回
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ベットに横たわり、すっかり傷がふさがった両手首を見ながら、サキは考える。

さすがに、目の前で両手首切るのはやりすぎだったかしら?
しかも、その後、血塗れのまま、襲っちゃた。
手首から血出したままの女の子に襲われるの、どんな気分かしら?
うーん、微妙なトラウマになってなきゃ良いんだけど。
それとも逆に、変な性癖が付いちゃってたらどうしよう?
毎晩出血しながらやるのは、命がいくつ有っても足りない。
でもあの時、元也君が私の事心底心配してるのを見ながら強引にしちゃうの、
すごい興奮しちゃった。
あの、元也君の混乱した顔。ああ、素敵。

あの時はさすがにイっちゃてたが、ああでもしない限り、元也君は自分から離れて
行ったかもしれないのだ。
なんたって、私のはじめてを、一代決心をして、あげちゃう位、好きになった人なのだ。
そう思えば、ちょっと位のとっぴな行動も許して欲しい。

それはそうと、気になる事がある。
意識が回復してからこっち数日の間、一回も元也君がお見舞いに来てくれない。
まあ、私も凄い事しちゃったから、彼が引いちゃったのかも知れない。
とは言え、元也君の性格なら、どんなに引いちゃっても、一回は花ぐらい持って来る筈だ。
それなのに、来ないと言う事は………

わかりきってる。
藍子ちゃんだ。

藍子ちゃんがどうせ、『サキさんの所に行くなら、もう一回手首切ってやる!!』
位の事言ってるんだろう。
あの娘なら、それ位の事は言いそうだ。

ふふっ、安心していいよ、元也君。
私、貴方に対してはこれっぽっちも怒ってないから。
ちゃんと私を選んだこと、わかってるから。
流石に、幼馴染にそこまでされちゃ、仕方ないよ。
私は、藍子ちゃんと違って、そこまで道理の通らない事、言わないから。
まあ、そうね。退院してから、
『酷いわ、元也君!!私のこと、捨てちゃうのね!!』
位の事を言わせて、困らすぐらいでいいわ。
どんな顔して、オロオロするかしら?
考えるだけで、ああ、体が熱くなっちゃう。うふ。

そして、藍子ちゃん。
いいわ。せいぜい、私が退院するまでは、せいぜい元也君に我が侭言っときなさい。
それが、最後の我が侭になっちゃうんだから。
いまごろ、藍子ちゃん、あなた、どんな酷い事、元也君にしてるのかしら?
きっと、手錠をかけて、ベッドに縛り付けて、その独占欲を満足させてる頃かしら?
…………………いいわね、それ。

そうね、元也君に首輪をつけ、部屋に監禁して、食事の世話も、下の世話もしてあげる、
食事にバイアグラとか混ぜて、興奮させて、『愛してる』って百回言えたら、してあげるって、
それで百回言っても、『心がこもってなかった、もう三百!』とか言っちゃうの。
あら、これ、ほんとに素敵。

ほかには、ええと、食べ物は全部、私が噛んでから、口移しで食べさすの。
それから、そうそう、その食べ物にはぜんぶ、私の涎とか、他の物とかが入ってるの。
後は………駄目。もう思いつかない。

とにかく、元也君を快感漬けにして、私無しでは生きていけない体にしちゃうの。
……と言っても、私だって、元也君とするまで、経験なかったし、どうすればいいか分かんないし、
どっかに、
[HOW TO 快楽漬け 〜男を虜にする方法〜]
みたいな本、売ってないかしら?売ってるはずないわよね。

……ああ、何考えてんの、私。
暇だからって、バカすぎる。

………でも、手錠と首輪ぐらいなら、多分SMサイトで買えるよね。
まあ、本気じゃないけど、監禁するわけじゃないけど、まあ、ちょっと、買ってみとこう、かな。
念の為。
 
後は…元也君を藍子ちゃんから隠せる新しい家。
あの家にいる限り、元也君は、藍子ちゃんから逃げられない。
藍子ちゃんがわからない新しい家で、一緒に暮らそう。
私が今すんでる所を引き払って、アパートにでも行こう。

…………決して、監禁目的ではない。念の為。
まあ、少しぐらい、お遊びのつもりで、監禁ごっこはするかもしれないかな?
しれないかな?
まあ、その結果、ほんとに監禁してしまうかも知れないけど、まあ、いいよね、元也君
言う事聞いてくれないと、また手首切っちゃうからね?きっちゃうからね?
切って、また襲っちゃうからね?からね?うふふ。

何かもう、私、立派なサイコさんね。自覚がある分、性質悪いかしら?
まあ、愛ゆえよ、愛。LOVEよ。
愛は人を狂わせる。いい事いうなあ、昔の人。

待っててね、元也君。うふふ。


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