合鍵 第26回
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元也「な、何やってんですか!サキさん!!」
パニックを起こしながら、サキのもとへ駆け寄る元也。
急いでサキの手首を押さえる。
だがもちろん、手で押さえただけで溢れ出す血が止まる訳も無い。

そんな元也を見ながら、サキはクスクスと笑い続ける。

快感だった。
元也が、ベットで寝ている藍子の事も忘れ、自分だけを見ている。
ああ、ダメ、癖になりそう、これ。

そうだ、と元也はナースコールの事を思い出した。
ナースコールを押せば、お医者さんやら看護婦さんがすぐに来てくれるだろう。
掴んでいた先の手首を放し、藍子の枕元にあるそれを押しに行こうとした。

だが、グイっと手首を掴まれた。
サキが、血塗れの手で元也の手首を掴んでいる。
そのまま、強い力でサキの方へと寄せられた。

サキ「ねえ、私のこと、愛してる?」
元也を抱きしめながら、サキは囁く。

元也「え、え?何、何言ってんですか?」
掴まれている手首に、どんどんとサキの血が流れてくる。
その生暖かい感触が、元也を混乱させる。

サキ「愛してる?って、聞いてるだけよ」
元也「あああ、愛してますって、だから、放して、お医者さん、呼んでくるから!!」
大声で叫ぶ元也。

それを聞き、ニッコリと微笑むサキ。
サキ「ダメ、私の事、愛してるって証明してくれなきゃ、お医者さん、呼んじゃダメよ」

元也「しょ、証拠?」
何、何、ええと、証拠?どうすればいいんだよ?
ええと、ええと、あああ、ええと、ええとええとええとええとええとええとええと

ハッと閃き、キスをした。
三秒ほど唇をつけた後、
元也「これで、これで良いでしょ!?
   お医者さん呼んでくるから、手ぇ、放してください!!」

唇を舌で舐めた後、
サキ「まだ、ダメ。信じられないわ。
   ……もっと、証明してくれなきゃ、ね」
そう言うと、サキは元也をベットに押し倒した。

 

藍子の足先から、ベットの端まで、丁度、人一人分が横になれるスペースがあった。
そこにおさまる元也とサキ。

元也「な、な、サキさん!!!」
女性の力とは思えない力で、元也の腕を押さえ込む。
いくら元也がパニックで力を入れれない状態でも、異様な力だ。

片手で元也の両手首を押さえつけ、余ったほうの手で元也のベルトに手をかける。
ベルトを外すと、血を流し続けている手首を、口元へと運び、血を舐め取る。

次いで、元也にキスをした。元也の口に血を流しこむ。

唇を離し、微笑むサキ。

サキの唇に、血が付いている。
まるで、紅を差したかの様だった。

こんな状態だと言うのに、一瞬、サキの美しさに見とれてしまった元也。

シーツが、どんどん赤く染まっていく。
その中で、サキは血塗れになりながら、自分が上になって、腰を動かし続けた。

元也は、全身に血を浴びながら、愛してる、愛してるから、早くどいて下さい!
お医者さん呼びに行かなきゃ、サキさん、死んじゃいますよ!!と叫び続ける。

最終的に、サキは元也から四回も搾り取った。

サキがやっと満足したのか、倒れるように横になった。
いや、気を失ったのかもしれない。

押さえられていた手首が開放されると、急いで起き上がり、ベルトを直しながら、
藍子の枕元のナースコールへと駆け寄った。
スイッチを押そうとした。

直前で、手首をつかまれた。
そのまま、骨が砕けそうな強さで、握られる。

藍子だ。

藍子が目を見開き、唇を噛み、顔面を蒼白にしながら、サキを睨んでいた。
掴んでいる元也の手首に藍子の爪が食い込み、血が滲んで来た。

ポタリ、ポタリと、シーツが吸い切れなくなったサキの血が、床に当たる音が響いていた。


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