合鍵 第2回
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「あら、元也君、おひとりなの?
 いつも着いてるあの娘はどうしたの?」
声に振り返ると、そこには美術部の先輩、サキさんがいた。
元也「そんな、いつも一緒って訳じゃないですよ」
つい先ほどまで、藍子に頼りきっていた自分を情けなく思っていたとこなので、
わざとぶっきらぼうに答えた。が、
サキ「あら、そうっだたかしら、ねえ?」
からかう様に、サキは言う。
 なんだか恥ずかしくなった元也は早歩きになる。
サキ「ああ、待っててばあ。そんなに怒ることもないでしょうに」
サキも釣られて早歩きになる。だが、元也の素直な反応が可笑しかったのか、クスクスと笑っている。
元也「ああもう、なんか用ですか?」
先輩にからかわれている事が分かっているので、元也の言葉も荒っぽい。
サキ「用?……ああ、そうだったわ、あなたも独り暮らしの身でしょう?
   どう、予定が無いのなら、同じ境遇の身同士、夕飯食べていかない?」

場所は変わって、ファミレスの中。
元也は鉄火丼を、サキはとろろ定食をたべている。
サキ「じゃあ、あの娘に晩御飯を作って貰ってる訳じゃないんだ」
元也「流石に、そこまで面倒をかけてる訳じゃありません」
……毎朝、起こしに来て貰ってる事は伏せておく。
サキ「ふーん…そっかあ、まだ、そんな仲じゃないわけか……ふーん」

サキ「やっぱりねえ、御飯と言うものは、誰か食べてくれる人がいないと作る張り合いって
   言うものがないわけよ」
ファミレスを出た後、サキは話続けた。元也に自分で御飯を作れないのかと聞かれた
ことにカチンときたらしい。
元也「はあ、そういうものですか」
料理を全くした事が無い元也にはピンとこない話だ。
サキ「…元也君、あなた、明日の晩御飯の予定はあるのかしら?」
元也「明日?…いえ、何も」
サキ「じゃあ、丁度いいわ。明日、私の家に来なさい。私の手料理、食べさしてさげるわ」
元也「…ちゃんと、食えるものですか?」
サキのチョップが飛んできた。


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