River of Tears 第3回
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 目を覚ますと激しい雨音がしていた。カーテンを開ければ、もちろんそこに朝日はなく、
どんより黒く厚い雲に覆われた空があった。多分今日一日は全力で降り続ける――そんな気がした。
 いつものように朝食をとり、いつものように家を出る。
 傘を叩く雨の音がいつになくうるさく感じる。多分今日も手を繋いでとか言われるのだろうか。
いや相々傘にしてくれと言われるかもしれない。
 可奈の送り迎えは続いている。弁当も毎日もらっている。
 ――あの人を腎臓病にさせたいが為に作られた塩弁当は一日限定であったのが心底ありがたかったことだが。
 ここ数日の可奈の自分への接し方についてはいくつか思うことはあったが、
自分の中では単に頼れる友人ということで片付けている。無理やりにでもそう思い込むことにした。
 ――一体どうしたいんだよ、オレもあいつも。

 可奈の家の前にはいつも様に可奈は待っていなかった。代わりに広子がいた。
多分雨で朝練がなくなったから一緒に行こうと思ってたのだろう。
「おはようさん。可奈はまだ?」
「ああ、可奈ね、今日調子が悪いからって」
「ふーん、そう」
 昨日は割りと元気そうに見えていたのに風邪でもひいたのだろうか。
 足は駅へと向け始めていた。
「最近可奈とどう?」
「どうって、お前達学校でいつも一緒じゃん」
「なんていうかさぁ……最近ずっと一緒にいるじゃない?」広子は短い髪を弄る。
 そうは言っても広子がいない時に可奈と一緒なのは部活のある放課後ぐらいしかない。
「最近って言ったって昔から一緒に行ってたし、最近変わったのは弁当もらってるから
一緒に食ってるぐらいと、帰りに送っていくぐらい――」
 そう言ってから自然と手は口元を隠していた。そういや帰りに送っていった途中でキスされたんだよな……。
「――まあ結局大して変わってないって」
 それは半ば自分に言い聞かせるように言った。
「ふーん……」
 広子は何か言いたげそうな顔をしていたが結局何も続けて言おうとはしなかった。

|> To Be Continued
  「今度あいつと一緒に弁天様のお参りでも行こうかと……」
  「これ以上本当の気持ちを黙っていられないんだっ!」
  「実はこないだ……夜這いに来たんだ……」


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