私のタカ。
愛しいタカ。
双子の弟。恋人。同級生。
どんな言葉も意味がない。
どんな言葉でも表せない。
愛しいひと。
頼りなげで可愛くて。それでもしっかり男の子で。
私のことを大好きで、私が大好きなひと。
タカがいれば何も要らない。
私はずっと側にいてあげる。
だからタカも。
ずっと側にいてね。いつまでも。
ベランダでぼんやりと月を見ていると、姉貴との思い出が浮かび上がってくる。
こうするのは何ヶ月ぶりか。
姉貴がいなくなって三ヶ月。毎日こうしていた。
姉貴がいなくなって六ヶ月。麻妃と知り合って、でも毎日月を見ていた。
姉貴がいなくなって九ヶ月。満月の夜にはこうしていた。
姉貴がいなくなって丸一年。麻妃と知り合って丸半年。
こうして月を見るのが懐かしくなるほど、俺は麻妃で満たされていた。
そこへ姉貴が帰ってきて。
全てが変わった。
姉貴は強く優しく美しく。あまりに眩しかった。
太陽は姉貴で月は麻妃。そう見えた。
そして太陽に惹かれた。月を捨てた。
しかし同時に太陽は強すぎた。あまりに強すぎた。
近づきすぎて、熱さに耐えられなくなって。
俺は月の優しさを知った。
でも。もう月には向かえない。
太陽はあまりに強すぎて。俺を離してくれないから。
隆史。大切な隆史。
彼の心は弱々しくて。
昔の私を見ているようで。
今の私を見ているようで。
私達は傷をなめ合うもの同士。
さみしい。あったかい。
あったかい。さみしい。
大切なひと。包んであげたいひと。
そして包んでほしいひと。私を大切にしてほしいひと。
私は弱くて、傷ついて一人泣いていた。
彼は弱くて、傷ついて一人泣いていた。
だからいっしょ。
一緒にいれば淋しくない。
でも。
彼は去った。
大切なひとを見つけて。
隆史の大切なひとは。
私じゃなかった。
淋しかった。
淋しすぎた。
隆史というあたたかさを手に入れて。
それを失ったときのさみしさ。
さみしさ。
そして隆史が現れたときの憤り。喜び。
よかった。どうでもよかった。隆史がいるならそれでよかった。
一人がいやだった。いてほしかった。私のものにならなくてもよかった。
それなのに。
隆史は今、一人で苦しんでいる。
私を癒し、傷つけ、癒し、そして今苦しんでいる。
隆史。大切なひと。
包んであげたいひと。