春の嵐 その5
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「いきなりエロいな、曽我」
これは佐藤くんだ。長身で筋肉質の体育会系で私と同じ学校の男の人。
「違うって。俺は陽子とはいっさいキスとかそんなのしてないぜ。一緒にでかける
ことはあったけどデートとかそんないいもんじゃないし。そういうのって
カップルって言わないと思うな」
思わず私は心の中で小躍りしてしまった。キスもデートもしてない!
私がそんなことを考えていると、町村さんが口を開いていた。
「だけど、良く一緒にいるじゃない。仲良いしさ」
「あれは見張られてるんだよ。おまえら、幼なじみに憧れてるだろ?現実を教えてやるよ」
「梶原って可愛いじゃん。あいつが幼なじみで何が嫌なんだよ?」
「そうそう。曽我君は、贅沢すぎなの」
町村さんのフォローの太田さんまで乗った。私はなんとなく嫌な気分になって、
メロンソーダをごくりと一口飲んだ
「じゃあさ言うけど、あいつさ、俺のおふくろと仲が良いから学校のこと、
一から十まで全部チクられてしまうんだぜ」
「別にたいしたこと無いな」
佐藤くんがつまらないなって顔で答えると、曽我くんは首をふった。
「ゲーセンとかに寄ったことも全部ばらされるんだぜ。たまんないよ。それにあいつ
勝手に俺の部屋に入ってきて、中を漁るんだぜ」
「エロ本でも見つけられた?」
町村さんのおもしろがるような顔に、曽我くんは少しとまどってからうなづいた。
「没収されて、口止めでマックを奢らされた」
前より大きな爆笑がわき起こる。曽我君だけが憮然とした顔をしていた。

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