春の嵐 その4
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「なんかさ、こういうのでやっと合格したって感じだよね」
「わかるわかる。なんか発表までは落ち着かないしね。親もピリピリしてさ」
男子はひたすらお肉を食べていたけども、私達は男の子の手前、あんまりがっつく
わけにはいかない。特に曽我君の前でみっともなくお肉にかぶりつくってのは、
恥ずかしすぎる。もっとも食べ放題なんで、ゆっくりと食べても問題ないのだけども。

だから男子達の会話が聞こえてきたのは、始まって30分ぐらいはたってからだったと思う。
「なぁ曽我。梶原も合格したのか?」
「おう。受かってたよ」
お肉を食べていた私は、思わず耳をそばだてていた。
曽我君と、その横に座っていた仲町君という優等生っぽい人が話をしていたのだ。
「あいつ、がんばったよなぁ」
「うん、私も梶原が同じ高校を受けるって思わなかった」
これは太田さん。泣きぼくろが大人びた雰囲気をかもし出している女の人だ。
「やっぱりあれだよね。曽我への愛だよね」
町村さんは、にやにや笑いながら、焼き肉を口に放り込んだ。
ポニーテールで可愛い人なんだけど、言葉遣いは男っぽい。
それを聞いた曽我君は複雑そうな顔をしていた。
「おまえらなぁ、なにかといえば俺達をすぐにカップル扱いしやがって。
俺達はただの幼なじみ。腐れ縁なの」
「えー、曽我君って冷たいなぁ。うちの学校の公認カップルじゃない」
太田さんの意外そうな顔に、曽我君はまるで頭痛を我慢するかのように額を手で押さえた。
「何が公認カップルだよ。おまえらが勝手にカップルにしてくれたせいで、
おれはぜんぜんもてなかったじゃないか」
「曽我。おまえがもてないのは梶原とは関係ないと思うぞ」
仲町くんが冷静につっこんだので、テーブルが笑いに包まれて、私も釣られて笑ってしまう。
「じゃあ聞くけどさ、カップルってキスとかさ、Hまでしちゃう奴らもいるだろ?」


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