春の嵐 その1
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掲示板に、一面にびっしりと数字が書かれた大きな紙が貼られていく。
私は固唾をのんで、ある番号を探す。
あった! こみ上げる喜びにせかされながら、もう一つの番号も探す。
もう一つもすぐに見つかった。
もう喜びを抑えきれなくなって、私は側にいる直人にとびついた。
「合格だよ! 二人とも!」
返事がない。直人はまだ自分の番号を探しているようだった。
「ほら、あそこ!あそこだよ!」
私の指さす方向をじっと見つめているうちに、直人の顔が輝きだした。
「ほんとだ! やったぜ! あはは、やったやったぁ! 合格だぁ!」
私と直人は二人で手をつないで飛び上がる。第一志望の高校に合格したのだ。
喜ばないわけがない! 特に私は。
がんばったのだ。担任には志望校を変えろと言われたこともあった。
だけど今、共にはしゃいでいる幼なじみの直人と同じ高校に行きたかったのだ。

「曾我君も合格したんだ」
「ああ。……岩崎さんも合格したんだね。顔でわかるよ」
私が感慨に浸っていると、直人に声をかける女がいた。
「あは、そんなに嬉しそうな顔してた?」
「だって、俺、岩崎さんがそんなに嬉しそうに笑うところ初めて見たよ」
「ねぇ直人、知り合いなの?」
少しもやっとしたから、つい私は口をはさんでしまった。
あたしと違っておとなしそうで清純そうで決して大口開けて笑わないタイプのひと。
嫌な感じ。


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